夜明けの空に聳える那須の山々。今日は山麓の集落で麦刈りである。旧家小手家の次男省作はまだ高校生。慣れぬ仕事に体は痛み、若い女中おはまに冷かされる。隣の秋葉家から主人清六の母おたきと嫁のおとよが手伝いに来る。清六は仮病を使い悪友らと競輪へ。怪我した省作をおとよは親切に介抱する。その夜、おとよは風呂を貰いに来た省作の手を握った。生れて始めての経験に省作は夜も眠れない。麦刈りが終った日おとよは夫に愛想をつかし実家へ帰るが両親のすすめで戻る。この頃、省作に婿入りの話。おはまの仲立ちで三月ぶりに逢った二人はお互の愛情を確信。だが人妻の身をなげくおとよは彼に婿入りをすすめ、泣崩れる。深田家へ婿入りする省作をおとよは丘の上から独り見送る。しかし省作の妻つね子は自分にも恋人がいると告げ時期を見て結婚解消を約束。二人の仲は人目には睦じいが、おとよが離縁して実家へ戻ったと聞いた省作は深田家を去る。祭の日、省作はおはまの手引でおとよに逢い幸福な未来を誓うが、おとよには又新しい縁談。彼女の拒絶に父親は片意地になり僅かに兄夫婦が慰める。翌日、嫂お千代はおとよを連れ実家へ出掛ける途中、省作と落合う。お千代は実家に近い旅館に彼を泊めた。夕暮、ボートを借りて沖へ出た二人は離れた岸辺に流され抱き合って気を失っているのを発見された。噂は村中に拡まるが、おとよの兄佐介や薊の努力で父親も説得。省作が大学を出たら、おとよも上京する条件で承諾を得る。出発の日、おとよの父の姿がないのを省作は淋しがる。だが家の前で見送る父親の眼は涙でうるんでいた。やがてホームで見送るおとよとおはま。おはまの吹くハーモニカの音が汽車を追って流れた。