宗川信一を追って上野駅に着いた津村千秋は、車中で知り合ったが到着とともに姿を消した琴美という女の置手紙に従い、琴美の娘でハーフのエミーを藤沢のルフレ神父の許に届けた後、信一の消息を聞くため宗方建設の工事現場に行った。その帰途、千秋はエトワールのマダムの弟英次に捕まり当惑しているところを東光モータース社長雨宮に救われ、住む所もないままに彼の秘書となった。一方蔵王を去った信一は、進路を変え、宗方建設再建に大阪の浪華証券社長の結城を訪れた。大阪での仕事も順調に進んでいたある日、信一は姉由江から“父倒る”の報を受け急ぎ帰京した。信一に好意を寄せる結城の娘紀子も、信一について上京、叔父の雨宮家に寄偶したが、叔母の元子と由江は信一に内証で紀子との縁談を進めていた。信一は着京早々千秋の行方を訪ね回ったが、その千秋は、雨宮の誘惑を逃れて、再び上京した波島のアパートに身を寄せていた。だが、そこに夜の女に混って病身の琴美がいるとは思いもかけなかった。波島の来訪で事情を聞いた信一は、大阪へ発つ前に千秋と逢う約束をしたが、不幸にもその日、琴美が危篤に陥り、千秋は空しく信一の列車を見送らねばならなかった。ある日、千秋は同級生だったみゆきに会い、彼女の勧めでキャバレーの歌手になった。人気歌手になっても片時も忘れ得ぬ信一との再会を想い浮かべ、千秋は大阪に来た。しかし、そこに信一と紀子の婚礼を見、由江の嘲笑を浴び逃れるように帰京、そしてルフレ神父の許で修道尼となる決心をした。信一も婚礼を延ばし藤沢の教会に来たが、千秋は信一の胸中を思い、逢おうとはせず、松林の道を走り行く信一の車を見ながら涙にむせび泣いていた。