駅に近いある商店街でピストル殺人事件が起った。殺されたのは土地家屋周旋屋の主人であった。犯行の起った家の正面には藤崎夫婦の借店があった。藤崎はラジオの修理をしながら職を探し、妻の君子は生れる子供を待ちながら粗末な洋裁店を営んでいた。犯行の夜、藤崎は自分の店の前にいた怪しい男を見た。犯人捜査を担当する白石刊事は日撃者を求めて商店街の人々に会った。藤崎はかかりあいをおそれて事実を述べなかった。藤崎夫婦の住むアパートの隣室にはタクシー運転手の松永夫婦が二人の子供と住んでいた。その松永がある夜、乗客とともにピストルで殺された。ピストルの弾丸から犯人は周旋屋殺しと同一人と断定された。後悔した藤崎は警察に行きすべてを告白した。藤崎の写真が新聞に大きく出た。当局は証拠を消す為に藤崎を狙って現われるであろう犯人を待った。囮にされた藤崎は犯人に生命を狙われる気配を感じた。不安な日々を過すのに耐えられなくなった彼は、妻の君子とともに田舎に行こうとした。それを知った犯人達は藤崎を追い、刑事達がその後を追った。上野駅の人ごみの中で三つ巴の争いが始まった。犯人達は次々と捕えられた。地下道に逃げこんだ藤崎を追いつめたのは、周旋屋が殺された夜、藤崎が自分の店の前で見た怪しい男であった。絶対絶命の藤崎は、追って来た刑事と争う男に体当りをくらわした。翌日の新聞には藤崎の犯人逮捕に協力したことが大きくのった。