大学を卒業し、先輩の谷川を頼って上京中の順一は列車の中でMS化粧品会社のメーキャップアーチストの加納小百合と知りあった。上京したが、谷川は頼みにならず、順一は洋食屋東洋軒のコック見習に住みこむことになった。主人の徳造には一人娘の澄江があった。銀座のしストラン「クララ」に試食に出かけた順一は小百合に再会した。クララの支配人は小百合の姉の妙子であった。妙子は初恋の人に似ている順一に、自分の店に来て働くことをすすめた。小百合は彼女を愛する海漕会社の青年重役坂本忠彦に順一の就職を頼んだ。順一を恋する澄江は小百合の出現に煩悶した。忠彦は小百合に結婚を申込んだが、順一の面影を追う小百合は心を決めかねた。初恋に破れたままいまだ独身でいる妙子は順一に当って見るよう小百合をはげました。酒ぐせの悪い徳造が洋食組合の宴会で喧嘩をし、そのごたごたの最中に、順一の父英作が上京して来た。立派なサラリーマンの順一を想像して来た英作は、コック姿の息子を見て一時はガッカリしたが、順一の信念をきいて「お前を信用しとるけん」という理解ある言葉を残して帰郷した。やがて順一のとりなしで喧嘩沙汰も納まった。澄江と順一との結婚話がもち上った。順一は小百合に相談した。二人が愛しあっていることを直感的に知った小百合は身を引いた。クリスマスの夜、小百合は泣いて妙子の胸に顔を埋めてり続けた。年が明け、春が来て、洋食組合の運動会が多摩川園で行われた。順一と澄江の二人三脚を見物する人々の中に坂本と手をくむ小百合の姿が見えた。