元治元年六月、土佐浪人岡田以蔵は勤王方に加わって幕府のイヌを斬り「人斬り以蔵」とまで恐れられたが、幕府の弾圧が強化されると、勤王の同志達は次第に以蔵を爪弾きし、今は場末で安酒を呻る身であった。愛する女郎屋「菊の家」の女お峰は、前金十両のために身売りを強請されている。彼はその金をつくるのに狂奔したあげく、遂に昔の同志山崎大次郎を新選組に売った。山崎の後を追った新選組の長七は、彼の足どりから池田屋に勤王派の侍が集っていることを知り、遂に池田屋騒動、勤王派の惨敗となり、山崎も討死した。思わぬ大事件に驚いた以蔵は、慟哭して自らの罪をわびるが、今は新選組からも「イヌ」と罵られる。一方お峰も、一切の原因は自分にあると、事のすべてを告白した。かくして勤王の同志達は裏切者以蔵を追い、傷ついた彼はようやく山崎の墓地誓願寺にたどりつくと、折しも山崎の遺骨を埋葬するために来ていた山崎の母とお雪に会い、自らの罪をわびながら絶命した。