関東信越地区の麻薬取締官北川は、横浜周辺に於ける麻薬密売の状況を調査せよとの命令を受けた。彼がこの大任を引き受けた理由というのは、かつて彼の戦友だった植田という男が、今では横浜の麻薬密売団の用心棒としてブラックリストに載っているからであった。昔の友を悪の沼から救い出したいという慾望と、麻薬絶滅の社会正義の信念に燃え、北川は単身で魔窟に潜入して、麻薬の出所を突きとめようと計画した。翌日からヤミ屋に扮した北川は、ハマの盛り場や港附近をあたって、遂に忘れもせぬ昔の友植田と出会い、その日から一味のアジトキャバレー・ルビーの二階に泊り次第に様子を探って行った。間もなく彼はこの麻薬団は亀山というボスが握っていること、植田はその用心棒でひどい中毒症を起していることなどを知った。昔植田の情婦であったというルビーのマダム洋子は北川に好意を持ったが、他の一味の者は北川の闖入を怪しんでいた。ある日植田は麻薬を切らして苦しみ、亀山のところへ自分の分をわけてもらいに走ったが、亀山は北川を追い出さなければ麻薬は分けてやらないと突っぱねてしまった。植田もうすうす北川の正体を疑い出すが、昔の友情にほだされて彼を追い出しかねているのだ。しかし北川は麻薬の出所を突きとめ、これを本部に報告し終ると麻薬団を脱出しようとした。だがその時、植田は北川を引き止め、キャバレー・ルビーの空室の一つに誘い入れ、裏切に対する憎悪をぶつけようとした。「俺はお前を救いたいのだ」と叫ぶ北川、その時突如拳銃を手に現われたのは亀山、しかし植田が亀山を射ち自分も負傷した。折しも一斉検挙の警官隊が到着した。我に返り鉄工場の数十丈の鉄骨へと逃げる植田、それに追いすがる北川、二人の抱合う姿をサーチライトが照らしていた。