佐技子とマリ子とは中学時代からの親友であるが、佐枝子は恵まれた家庭に育っているに比し、マリ子は家庭の事情から産婦人科医院の由基子の見習看護婦として働いている。由基子の弟信三は、母校城南高校の野球コーチをしている大学生だが、マリ子は彼に秘かに心を寄せていた。ある夜、佐枝子の誕生祝いに皆が集まった時に、佐枝子の父は信三と佐枝子の婚約を発表した。それをきいてマリ子は悲しみの色をかくすことができず、自分の家へ逃げ帰ったので、信三達は彼女の心を知って気に病んだ。全国大会も間近かなある日、信三のコーチする野球部は箱根へハイキングに出かけたが、山で佐枝子達女子高校生の一団と偶然出逢った。信三はここで佐枝子に愛の証しを求めて迫った。その夜、みなが寝静まった頃、佐枝子が一人湯ぶねにつかっているとき、ふと思わずそれを覗見した主戦役手の木内は、心かき乱されて、矢庭に電気を消して、中に入って佐枝子を抱いた。暗闇の中で、彼女はそれを信三だと思いこみ、彼に深い憤りを覚え、それ以来というもの彼を避けるようになった。一方、木内も信三に対する良心に悩み、一時は野球をやめる決心迄したが、それを励ますのは何も知らぬ佐技子だった。だが彼は遂にたまりかねてそのことを佐枝子に打あけてしまった。だが甲子園大会は始まり信三も木内もすべてを忘れて旅立った。懊脳を超克して、佐枝子も応援にと信三のために後を追うが、常にこの二人のためをはかったのは、未だに心の底に抑え難い苦しみを持つマリ子であった。