徳川末期。政治の腐敗と飢饉は全国を覆い、庶民は塗炭の苦しみに喘いでいた。上州佐位郡国定村の土百姓忠治も年貢米を盗まれた償いに、庄屋に只奉公に上らなければならなかった。が、女中おとよとの仲を不義の恋と罵しられ、無一文で追われた忠治は、同輩の安五郎とやくざの世界に入った。以来、忠治は安五郎もその悪どさに呆れる程、賭場を荒して廻り、遂には親分の伊三郎まで斬り捨てた。伊三郎の情婦お町が訴えたので、忠治は百姓達の一揆に呼応して赤城山に立龍り、やがて忠次一家は山を下ってチリヂリの旅に出た。それから五年、忠治は再び一旗上げるべく故郷に帰ると、夢にも忘れぬおとよが安五郎の女房になっていた。おとよも懐しさのあまり、忠治と愛慾の一夜を過すが、安五郎に感づかれ井戸に身を投げた。怒った安五郎は役人を手引して忠治を襲った。乾分達は次々と捕われ、忠治は追いつめられるが、心の変った安五郎に救われる。が、安五郎も傷つき、おとよの死を告げると息絶えた。がっくり闘志を失った忠治の上へ捕手の縄が幾条となく降って来た。観念した忠治は祭囃子の聞える中を、唐丸篭に揺られて引かれていった。