天上界を暴れ廻った孫悟空も、観音様に取り押えられ、下界へ追放されることとなったが、人間界に一つの幸福をもたらす迄は天国へ帰れない。人間界に降された悟空は、ある歓楽境で、悪大名九虎王の手下独角たちに借金のかたとして引き立てられ行く美少女小青を、ある美男子の姿に化けて助けた。恩人たる悟空を小青は家へ招いたが、その美貌と快腕に魅せられて悟空と寝室を共にする気になった。ところが彼女のすすめでうっかり入浴した悟空は、術が解けて猿の顔に戻ってしまい、ほうほうの体で逃げ出してしまった。次に平凡な顔の男に化けた悟空は、路上で数多の子供を連れた若い男女王信と翠玉に逢った。孤児の為に保育堂を経営していた二人は、九虎王が妾宅を構えるために家を追い出されたのである。悟空は直ちに独角を追い払い、保育堂に平和を取り戻し、相思相愛の王信と翠玉を結びつけてやったが、翠玉の妹紅玉はこの間悟空に心惹かれて行った。悟空は九虎王が地獄の大魔王紅核児であると見破った。人間は誘惑にもろいから幸福になれないということを悟空に示すため、紅核児は先づ小青を誘惑して見せ、次で紅玉をも口説こうとする。一旦は自信を失った悟空も今や猛然紅核児と秘術を尽して闘ったが、ここにはじめて観音様よりの助けを得て紅核児を倒した。今天国に戻る許しを受けた悟空は、二度と紅玉に会うことを控え、尽きぬなごりを惜しみつつ天界へと上って行くのであった。残されて涙ながらに悟空をしのぶのは紅玉である。