1933年。29年からアメリカを襲った経済史上空前の不況のために、失業者は浮浪者と化し、彼らはホーボーと呼ばれていた。ホーボーたちは鉄道を利用して野宿地から他の野宿地へ移動した。彼らは貨物列車や家畜車に乗るのが常套手段であったが、やむを得ない場合は車輪と車輪の空間に巧みに身を忍ばせて移動するという危ない綱渡りもした。だが、オレゴン州のウィラメット・バレーに来るホーボーたちは、そこを通過する19号車に乗ることは避けていた。この列車の車掌シャック(アーネスト・ボーグナイン)は冷酷無比な男で、彼はホーボーたちの無賃乗車は絶対に許さなかった。ハンマーを携え、ホーボーたちを見つけたらその場で殴り殺すというすさまじさだった。だが、この狡猾なシャックの裏をかいて、いつも悠々と19号車に乗っているホーボーがいた。Aナンバー・ワン(リー・マーヴィン)と呼ばれ、ホーボーから“北国の帝王”というニックネームを贈られている男だ。ある日、Aナンバー・ワンのニワトリを盗もうとして失敗したシガレット(キース・キャラダイン)という若者が彼の王座を奪おうと、行動を共にするようになった。そのために19号車で思わぬ失敗を犯したが、そんなことでひるむA・ナンバー・ワンではなかった。崖下でひと息いれると、彼はあたりに捨ててあった油の空きカンを集めて、それを持って再び線路に現われた。A・ナンバー・ワンはその空きカンの底に残っていた油を集めてレールに塗り始めた。シガレットもそれをまねた。これはやがてここを通過する客車の機関車の車輪を空回りさせて、1時停止させ、その間に列車に乗り込み、ある地点で19号車においついたとき、それに乗り換える方法だった。この計画は見事に成功した。それから3日目の朝、シャックは2人のホーボーが車の下に潜んでいるとにらみ、得意の鉄棒つきの綱で2人を撃退する手を使った。この戦法は効を奏してAナンバー・ワンはさんざん痛めつけられ危うくなった。シガレットはその気になれば彼を助けられたのに知らん顔をしていた。それでもAナンバー・ワンは降参しなかった。鉄棒の責苦をのがれるためにAナンバー・ワンは、車のエア・ブレーキをかけて列車を急停車させたからたまらない。シャックはふり落とされ、火夫は傷つき、機関士は気を失い、最後部に乗っていたブレーキ係りは死んだ。やがてシャックの指図により19号車は発車した。そして彼は、車によじ登ろうとしているシガレットを見つけ、鉄製のクサリで殴り殺そうとした。Aナンバー・ワンはシャックに怒鳴った。「シャック、貴様の年貢の納め時が来たぞ!」。無蓋車の上で鎖を手にしたシャックと、それに立ち向かうAナンバー・ワンとの血みどろの決闘が始まった。Aナンバー・ワンが無蓋車の羽目板にかけてあったマサカリをとって反撃に出て、シャックに重傷を負わせ、車から突き落とした。彼はシガレットをも突き落とした。19号車はばく進を続け、Aナンバー・ワンの叫び声だけが木霊する。「貴様のようなチンピラに“北国の帝王”をまねる資格はない。貴様のようなチンピラは物ごいをして歩くのが分相応だ、金輪際人まねをするんじゃねえぞ」。