清水市の有力者須山剛之助の長女由紀子は妹晴美の音楽教師、三上達哉と相思の仲である。しかし由紀子には父の秘書をつとめる従兄、笹沼という婚約者がいて二人の仲を快くおもわない。一日、由紀子は三上、晴美達と近郊の山へハイキングにでかけたが、偶然休憩したホテルのロビィで、大阪に出張したはずの父が見知らぬ中年の婦人と一緒にいるのを目にする。婦人の名は加藤八重、日蔭の身ながら由紀子の実の母であった。秘密をしつて由紀子は傷つく。その唯一の慰め手三上も、笹沼と由紀子の結婚をのぞむ須山のいやがらせに耐えかねてか、東京へ去る。由紀子もやがて後を追うが、キャバレーのバンドマンをしている三上と、バアの女給に住みこんだ彼女とは、お互いの所在すらしれない。が、三上はある夜キャバレーにくり込んできた不良学生の中に晴美の姿を発見する。芸術大学の入試に不合格し、自棄しきったかつての教え子を、彼はふかく諌めた。たまたま晴美が警察に留置されると、彼は引受人として出頭し、後から来合せた剛之助や笹沼と顔を合せる。彼らは以前の非を悔いていた。そろって皆は三上のアパートへ帰ってくるが、途中はからずも八重と連立つ由紀子に再会した。彼女はバアの一常連にしつこく言寄られ、にげだしたところを、出京して孤児院に働く八重とめぐりあったのである。みんなの心からな祝福のうちに、三上と由紀子は結婚することになった。