戦争は平和な瀬戸内海の小さな島にまでその傷を残して行った。小豆島に住むおとら小母さんは大阪で主人と息子を失くして故郷の島へ帰って来たが、となり村へ帰って来た親類の子ヨンちゃんを引取った。ヨンちゃんのお父さんはまだ戦争から帰らず、お母さんは島へ帰った日から病気で寝ているのだった。お母さんの傍には兄の一郎がついていたが、とうとうお母さんもお父さんが帰るのを待たずに死んでしまった。そこで一郎もヨンちゃんと同じくおとら小母さんに引取られて来た。一郎は世の中で自分位不幸な人間はいないと思っていた。友達の史郎ちゃんも達雄君も宗一君も戦争のためお父さんを失った子供たちだったが、心を合せて一郎を幸福にしてやりたいと色々努力するのだった。一郎はそのため段々明るい子供になって来た。そしてある日、待ちに待ったお父さんが帰って来たのだった。一郎とヨンちゃんは大喜びだった。けれど、史郎は淋しかった。史郎ちゃんのお父さんは台湾沖で船と一緒に沈んでしまったのだったから。しかし史郎は浜辺へ出て唄をうたうのだった。そうすると何となくお父さんが帰って来るような気になるのだったから--。