若くて男振りのいい山部真吉は、母かよと二人でアパート住まいをしていたが、「銀猫」というバーを経営する一方、近辺のやくざとして顔を売っていた。ある日店の女給マリ子の友達園部道子が首飾りを売りたいとマリ子を訪ねて来たのを見て、真吉はその気品のある美しさに一眼で虜になってしまった。道子は落ちぶれても家柄のある家の娘で、幼稚園の経営に一生を捧げていて巷のやくざには高嶺の花だった。しかし真吉はあきらめず、やくざから足を洗って所謂紳士修業をやりはじめた。やがて道子の兄夫婦の事業を援助している矢代という男と知り合ったが、矢代は真吉をさんざん利用して偽株をつかませた。世にいう紳士の正体を知った真吉は二度と喧嘩はしないと道子に誓ったのだったが、矢代のような卑劣な男に道子を渡すことに堪えられず、思い切って鉄挙をふるった。道子はそうした真吉にかえって真実の人間を見たのだった。やがて、酒場を喫茶店に改造した明るい店で働く真吉と道子の朗らかな姿が見られるようになった。