塚本良介は、理知的な青年であったが、裸一貫で飾りけのない魚河岸へとび込んで来て、「河岸運送」のトラック運転手となった。社長は「帝国」の仇名のある儲けるためにはスピード違反、ひき殺し意にかけぬという強引な男で、それに使われる連中も、みな一癖ある男たちだった。その中の一人サイドカーの姉深雪を良介はある日自分の車に同乗させ事故を起こし、深雪は右脚骨折で入院という騒ぎになった。良介はそのため賠償や入院費を負担しなければならなくなり、これがきっかけに、事あるごとに使用人の身を縛ろうとする帝国への反感が人々の間に燃えあがった。その帝国にいいくるめられて、嘘の怪我を装ったことから良介は深雪をひどく怒らせたが、良介はそれでも深雪への見舞いを欠かさなかったので、彼女の心もいつか解け恋に変わって行った。深雪の弟は、女に裏切られたことと、病弱を帝国にののしられたことから自殺をした。良介は事をかまえて会社乗取り策を画する連中とは別に民主的な組合を作り、反社長派の暴力的な連中に対抗すると共に、帝国の娘美也子、先輩の麻川などと共に誠意をもって帝国に意見し、「河岸運送」はそのため明るさを増し、いっそう活気を呈した。帝国は良介をひそかに美也子の婿にと考えていたが、良介は深雪に求婚し、深雪も、今は晴れてか良介の助手席に座るようになった。