自称作曲家の中年ボヘミアンが、浮き沈みの激しい獅子座の運勢にもてあそばれ、不運と幸運の間を駆けめぐる様を描いた心理ドラマ。「緑の光線」のエリック・ロメールの35ミリ長編処女監督作であり、同じ年に製作された「勝手にしやがれ」や「大人は判ってくれない」と並ぶヌーヴェル・ヴァーグの記念碑的作品である。製作はクロード・シャブロル。伯母の遺産でプロダクションを興したシャブロルの逸話が、この作品にヒントを与えたとも言われている。台詞は「いとこ同志」「太陽がいっぱい」なども手掛けたポール・ジェゴフ。撮影は、クルーゾーの「密告(1943)」やコクトーの「オルフェ」などのニコラ・エイエ。主演のジェス・ハーンは、B級映画に数多く出演していたがこれが初主演作。この作品はゴダール、トリュフォーらのヌーヴェル・ヴァーグのスターの陰に隠れ、製作されてから3年後の1962年5月2日にパリ1館でしかロードショー公開されなかったという不遇の道を歩んだが、同年のカイエ・デュ・シネマ誌ではベスト5に選ばれ批評的には決して悪くなかった。