一九七〇年夏、アカデミア・フィラルモニカ(楽友協会)の試験準備のため、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(クリストファー・デイヴィッドソン)は父レオポルド(リノ・カポリッキオ)と共にパラヴィチーニ伯爵(カルロ・デッレ・ピアーネ)の別荘を訪れる。14歳のモーツァルトは伯爵に試験に有利な口添えをしてもらうため、伯爵の息子ジュゼッペ(グリオ・パリジーニ)と仲よくするようにと父から言い渡される。しかし何かとジュゼッペはモーツァルトを目の敵にし、悪童達と組み袋だたきにする。その上伯爵夫人、言動異常で幽閉されている彼女のいとこジョバンニ、妻が病弱で余命幾ばくもなくジョバンニと不倫の関係であると思い込んでいる伯爵(実は自分の方が危ない)などに囲まれ、練習もままならない。ある日、森向こうの家のおばあさんが亡くなり、揃って弔問に出掛ける。そこでモーツァルトとジョバンニは祖母に死なれ、一人きりになった美しい少女レダ(バルバラ・レベスキーニ)と出会う。二人はレダに淡い恋心を抱き、彼女を介して次第に警戒を解いていく。三人はふざけ合い、心ときめかせ、木漏れ日おちる森の散歩を楽しんだり、レダを真ん中にベッドで眠ったりして時を過ごした。それはモーツァルトの抑圧された生活に少年らしい潤いを与え、彼はその平凡な生活に至福の喜びを覚えるのだった。森、水、妖精、雲、夜、月、星--別離。モーツァルトはこの生活を守るため、試験にわざと失敗しようとするが、知り合いの試験官の神父によって答案を直され、合格。別荘を離れることになる。モーツァルトは一人森にこもり、かなわぬ生活にささやかな抵抗をする。しかし森から帰ると一つの曲(ピアノ曲第12番ヘ長調K332)をレダのために奏で、作曲者として大人として都会の生活に戻って行く。