アイルランドのクロンターフ伯爵の領地に住むジプシー団は、或日土地の警察の手入れを食い、団長マイリキの娘マリーは伯爵の屋敷へ逃げ込んだ。これが縁となって彼女は伯爵と結婚した。それは一八八九年の事であっが、ジプシーの占者が予言した様に多幸であるべき結婚は僅か五ケ月で、伯爵は落馬が原因でこの世を去った。占者はその上この結婚によって凶事が三代に亙って続くであろうと予言した。伯爵の死後はマリーは親戚から白眼視されたので、彼女は再びジプシーの群れに帰り、かくて幾星霜は過ぎ去った。田舎に隠退した彼女は「暁の翼」と名付ける駿馬を愛し、これをダービーに出場させ、その勝利によって得た賞金を愛孫マリーへの結婚の贈物にしようとした。そして「暁の翼」を若いケリイに頼んで調教して貰うことになった。彼は何時しか美しいマリーを恋する様になったが、彼女にはスペイン貴族の婚約者があって、ケリイと彼女の仲を心配して遥々とイギリスへやって来たので、これを知ったケリイの失望は大きかったが、彼は約束を守って「暁の翼」の調教を続けた。ケリイは当時イギリス一と言われたドノヒュウを騎手に選び、首尾よくダービーで優勝の栄冠を得た。所が賞金を與える段になって馬の持主として登録されたビアンチニ夫人の生存に疑いを生じ、賞金の行方が怪しくなって来た。するとマリーよりも金が目的だったスペイン貴族ドン・ディエゴは婚約解消を申し出て其の場を去った。するとそこへジプシーの一団がビアンチニ夫人であるマリーの祖母を馬車に乗せて連れて来たので、審判官は無事に賞金をマリーに渡した。彼女は今になってはっきりとケリイの愛情に打たれ、彼と結婚する事になった。