ジャックリーヌはパリ大学を優等で卒業して女法学士になった。父親は彼女が一日も早く結婚して初孫の顔を見せる事を望んでいたが、ジャックリーヌは女弁護士になる気で、母親の助けを得て父と争った末、やっと弁護士事務所を開かせて貰った。但しそれには一年半経っても仕事に目鼻がつかぬようなら、家に戻って良人を持ち家庭生活に這入るという条件がついていた。時が過ぎてあと一ヶ月で約束の期限が切れるというのに、ジャックリーヌのところへはたった一つの依頼さえ無かった。するとある日弁護士会長から電話がかかって来た。彼女を収檻されている不良青年ピエールの弁護人に指名して来たのである。彼女は大喜びで刑務所へ乗りつけピエールに会ってみると、彼はひねくれた男で当分娑婆に出たくないから弁護人は不要だと言うので、困ったジャックリーヌは泣き出してしまった。そこでピエールも止むなく弁護して貰う事にはなったが、少しも口を開かないのでジャックリーヌは女中兼秘書を相手に勝手な調書をデッチ上げ強硬に判事に談判を始めた。この長ったらしい調書に閉口した判事は、ジャックリーヌに逢うのが嫌さにピエールの免訴状を出した。しかしピエールは忽ち又元の悪い生活に戻ってしまった。同情したジャックリーヌは彼を自分の家のボーイに使ってやることにした。その中若い二人は身分の差を忘れて憎からず思う様になる。約束の時は迫り、父は旧友の植民地総督が帰国するのでその息子とジャックリーヌを結婚させる気でいる。仕事は相変わらず一つも無いし気をもんだ母親はピエールに金を出して、又罪を犯して貰う様に頼んだ。そこでピエールは再び不良青年の生活に帰ってしまったし、約束の期限は切れたので一日ピエールと楽しく遊んで別れる事になった。翌日父の晩餐会に出たジャックリーヌは、総督の息子というのを見て、ぼんやりした男であるのにがっかりした。彼女がすっかり悲観している時、総督は遅れてやって来た長男の方を紹介した。驚いた事にそれはピエールだった。ピエールは総督よりも一足先に帰国していたのを、ジャックリーヌの父親と弁護士会長が相談の上で結婚反対の彼女を懲らすためお芝居を仕組んだのであった。ピエールとジャックリーヌが間もなく結婚式を挙げたのは言う迄もない。