ベルリン郊外の荒屋にギャングが巣食っていた。その頭目はドクトルと称するが、姿はいつも見せずカーテンの後から声だけで命令を発するのだ。涜職馘首された元刑事ホフマイスターは名誉快復の目的で、このギャングの巣窟に潜入した。探偵長ローマンの許に、頭目の名が判った、と電話がかかったが、電話の声はそこで絶えた。急遽、現場を襲うと窓硝子の一枚に「マブゼ」と書いてあるのみだった。そのマブゼは精神病学者バウム教授の研究材料として当時教授の研究室に監禁されてあったので、教授は新しいマブゼ怪盗団と、教授の研究資料の精神病者マブゼは無関係だと主張した。その犯罪狂マブゼは一夜研究室内で死亡してしまう。新聞はマブゼの死を報じたが、ローマンは検死の結果、死体がマブゼ本人であるかを疑った。一方頭目の訃報に呆然たる団員達の前に、突如カーテンの彼方から昨日と同じ頭目の声が響いて来た。団員中にケントという青年があるが、彼は恋人の女役人リリーの勤めで自首を決意した。途端に捕えられてカーテンを隔てた頭目に訊問を受ける。激昂したケントは声に向かって発砲するが声は依然として嘲けるのであった。ケントがカーテンを引きちぎると奥には肖像画と拡声器あるのみだった。そして拡声器はケントとリリーに死の宣告を下したが辛くも脱出したケントはローマンと共に教授の研究室に赴く。室の中から聞える教授の声が頭目の声そっくりなので、ケントが扉を押して入ると拡声器があるのみだった。ローマンはバウムを療養所へと追跡すると、居合せたホフマイスターが、バウム教授を指して、彼がマブゼです、と告げた。教授はマブゼの遺書整理中、死せるマブゼの意思代行者として精神上マブゼに変身していたのであった。