西暦二〇四八年、テレビのアナウンサーは百年前のみじめな世の中を紹介しはじめた。オットー・ノルマルヘルブラウヘル(G・フレーベ)は、よごれた軍服姿で生れ故郷のベルリンに復員して来た。そこに見出すものは変り果てた廃虚と軍国主義の名残り、禁止の立札、そして横行する闇屋だった。昔彼の住んでいた家は変愛周旋事務所の女と闇屋に占居されていて、彼はあばら屋に住まねばならなかった。彼は夜警、給仕、印刷工、と職を転々として生活の再建を計るが思うように行かない。彼はよく夢でお菓子売りの美しい娘と出会うが、ある日、町で現実にその娘と逢い、交わりは急に進んで結婚した。だが彼の生活はやっぱり苦しい。それでも彼にはどうしても不正直をすることが出来ず、闇など思いもよらなかった。彼はある時二人の反動主義者が口論している巻きぞえを喰らい、のされて死んだものと思われて棺に入れられた。だが彼は墓場で息を吹きかえし、再び生きて行く希望がよみがえった。