ジンコ警部(M・ピッコリ)はその国で最もすぐれた警官であった。今回も現金一千万ドルの輸送に一計を案じ、正規の装甲車にはニセ紙幣を積み、その後から外交官ナンバーのロールスロイスに本物の紙幣を積んで出発した。しかしこの金を狙う怪盗ダイアボリック(J・フィリップ・ロー)にこの手は通用しなかった。一行が波止場につくと五色の煙幕がひろがり、気がついたときにロールスロイスは消えていた。ダイアボリックは、恋人エバ(M・メル)の運転する白いジャガーに同乗し、現金もろとも地下の秘密基地に戻っていたのだ。地下の愛の巣でダイアボリックとエバはひと休みしていた。ところがテレビ・ニュースによるとイギリスの大蔵大臣が夫人と共にこの国を訪問するという。しかも夫人は十一個のエメラルドをちりばめた首飾りを着用して……。ダイアボリックはエバの誕生祝いにこのエメラルドを贈ることにして、また活動にうつった。警戒十分の城、大臣夫の居室、ダイアボリックはあらゆる警戒網をくぐって、首飾りを盗んで消えた。だが逃走中エバは手に負傷し、もぐりの医者を訪ねたところを捕えられてしまい。ダイアボリックはエメラルドと一千万ドルと引換えにエバを引渡してもらうことにしたが、結果はダイアボリックの作戦勝ち、警察側はまんまと、エバをとられてしまった。たび重なる失敗に、政府はカンカン。次に金塊を国外に売り渡すときは、今度こそとばかりに警戒したがこれも失敗。だがエバのエラーからダイアボリックは黄金に体をつつまれた立像にされてしまった。最後に笑う者は自分だ、とジンコ警部は涙したが、そのとき立像の目玉がギョロリと動き、エバにウインクしたのをエバは見逃さなかった。