マリー(C・ドヌーブ)がジェローム(P・ノワレ)と結婚した最大の目的は、ノルマンディの田舎町を離れて夫と一緒にパリに移り住むことだった。しかしジェロームは、いっこうにそんな気配を見せないばかりか、田舎での生活に満足しているらしい。そんな夫がマリーには、いらだたしかった。一九四四年六月四日、すなわち、連合軍のノルマンディ上陸作戦の前夜のこと。マリーは納屋でジュリアンという若者を見つけた。彼はマリーの姿に心ひかれて忍びこんだと語ったが、実は彼は、ロンドンからの指令で、潜伏してる“自由フランス”の一員だった。こんな片田舎にも、戦雲はおおいかぶさろうとしていた。ちょうどその頃、ドイツ軍の将校クロップストック大尉が部下をひきつれてジェロームの屋敷にやってきた。ここをドイツ軍の本部にするというのだ。だがクロップストックは、マリーを、ひとめ見るなり、たちまち心動かされ、口説き始めた。そこへジュリアンが現われた。マリーは兄だと偽って彼の身分をかくしたものの、ジュリアンとてマリーに気があるので、思わぬ時、思わぬ所で恋のさやあてが始まった。そしてその夜--ジュリアンはマリーの助けをかりて、ロンドンからの指令通り、屋敷に爆破装置を仕かけ、マリーの手をとって逃げだした。この事実を知ってすっかり頭に血がのぼったのは夫のジェローム。ただひとつの狩猟用小銃を手にして、行動を開始した。連合軍の降下部隊を助け、ドイツ軍の大砲を破壊した。その頃、ジュリアンと恋の逃走を続けていたマリーは、あまりロマンチックでないことがわかり、ひとりで帰って来た。すると村は解放され、ぐうたらだと思っていた夫のジェロームが英雄としてもてはやされていた。そして二カ月後、夫妻は連合軍とともに、パリに入城した。パリに行きたかったマリーの夢は思いがけない実現をみたのである。解放されたパリの街は活気にあふれていた。