ケイト(R・トゥシンハム)は美人ではないが、緑色の瞳から出る純真さ、無邪気さが誰をもひきつけた。親友のバーバ(L・レッドグレーヴ)は彼女とは正反対の現実派だが、二人はダブリンでドイツ婦人ヨアンナの下宿屋に同居、やっと都会生活に慣れたところ。ある日ユージン(P・フィンチ)という作家が二人の前に現われた。親ほどの年のちがう彼がケイトみたいな娘っ子に心ひかれたのは彼女のナイーブは優しさのせいだろう。それが理性や良識で支えかねるほどの深みにはまってしまったのである。二人はしばしば会った。ユージンは当然のことながらケイトの体を欲しがった。しかしケイトには、まだそれは出来なかった。恐かった。彼女の心に空しさが残った。ケイトの一家はカソリック信者だ。ヨアンナの知らせで彼女の行状を知ったとき、父親も伯父も怒ってユージンの家へ乗りこんだが、結果は喜劇的だった。お互いに非難の言葉を言いあったあげく、ユージンと家政婦の散弾銃に脅されて逃げ帰った。この事件はかえってケイトの心をユージンに近づけてしまった。村の牧師の説諭も耳に入れず、彼のもとに行きそのまま彼の家に住みついた。式もあげず、その日から彼女は身も心も彼の妻になった。二人はしばらくは幸せな日を送った。しかし長くは続かなかった。ウダツの上がらぬ中年作家と、恋を恋する田舎娘との間には徐々に大きなミゾを作り、やがて絶望感のみしか残らなくなった。ケイトは苦しんだ。そしてある日、彼女は彼から去ろうと決心した。心のどこかに、もしかしたら、彼が後を追ってくるかもしれない、そんな希望を残して。だが、彼は来なかった。大人なのだ。ケイトはロンドンに向う船の中で徐々に大人になりつつある自分を感じていた。