イワン(コーリヤ・ブルリヤーエフ)がいまも夢にみた美しい故郷の村は戦火に踏みにじられ、母親は行方不明、国境警備隊員だった父親も戦死してしまった。一人とり残された十二歳のイワンが、危険を冒して敵陣に潜入し少年斥候として友軍に協力しているのも、自分の肉親を奪ったナチ・ドイツ軍への憎悪からであった。司令部のグリヤズノフ中佐、ホーリン大尉、古参兵のカタソーノフの三人が、イワンのいわば親代りだ。グリヤズノフ達はイワンをこれ以上危険な仕事に就かせておくことはできない……これが、少年を愛する大人たちの結論だった。しかし、イワンはそれを聞くと頑として幼年学校行きを拒否した。憎い敵を撃滅して戦いに勝たねば……やむなくイワンをガリツェフ(E・ジャリコフ)の隊におくことにした。ドイツ軍に対する総攻撃は準備されていたがそのためには、対岸の情勢を探ることが絶対必要であった。出発の日、カタソーノフはざん壕から身をのり出し敵弾に倒れてしまった。執拗に彼の不在の理由をきくイワンにはその死は固く秘されホーリン、ガリツェフの三人は小舟で闇の中を対岸へ。二人が少年と別れる時がきた。再会を約して少年は死の危険地帯の中に勇躍、進んで行く。その小さな後姿がイワンの最後だった。終戦。ソビエトは勝った。が、そのためには何と大きな犠牲を払われねばならなかったか……。かつてのナチの司令部。見るかげもなく破壊された建物の中に、ソビエト軍捕虜の処刑記録が残っていた。その記録を一枚一枚調べるガリツェフ。あった。イワンの写真が貼りつけられた記録カードが。戦争さえなかったらイワンには平和な村の毎日だった筈なのに……。