ジュヌヴィエーヴ(ブリジット・バルドー)は二十五歳の女性。彼女は父の遺産で何不自由なく暮している。ある日、ディジョンへ行った彼女は、ホテルの10号室の鍵をフロントで受取り、階段を登って行った。何故、そのとき部屋を間違えたか彼女にも判らない。六号室の男、ルノー(ロベール・オッセン)は睡眠薬を飲んで自殺を図っていた。翌日、ジュヌヴィエーヴはルノーを病院に訪ねると、彼は全快していた。男は遠慮なしに彼女について来た。パリのジュヌヴィエーヴの部屋までも。もう彼女は拒む術を忘れていた。そしてルノーのウイスキーと探偵小説の生活がそこで始まった。あるとき、彼女はルノーの激しい愛撫にあえいだ。「あなたを愛してるわ」が、彼は笑った。「愛なんて信じてるのか?」。それでもジュヌヴィエーヴのルノーに対する気持はつのるばかりだったが、彼からは今まで以上の何ものも得られなかった。毎日毎日、酒と女のルノーの生活。彼はわざと売春婦と戯れ、懸命に自分を汚し、ジュヌヴィエーヴを傷つけようとしているのだ。彼女は悲しみと怒りに心が張り裂けるようだった。夜がしらじらと明けかかる頃、彼女は父親のようなカトフのもとへ心の救いを求めて走った。間もなく、ルノーがカトフのもとにジュヌヴィエーヴを求めてやって来た。憔悴し切った男の姿だった。翌朝、荒涼とした寺院の廃墟で、ルノーはジュヌヴィエーヴの前にひざまずいた。「許してくれ、ジュヌヴィエーヴ。もう自由なぞいらない人間になりたい……下劣きわまりない一人の人間に……すてないでくれ、おれの傍にいて、一緒に生きてくれ……」ルノーの放浪はあるいは治らないかも知れない。が、ルノーはジュヌヴィエーヴのものなのだ。ディジョンで彼の命を救って以来、初めての幸福がジュヌヴィエーヴの胸中でいっぱいにふくれ上がった。