スイスのジュネーブにほど近いレマン湖畔の豪華な別荘でジル(ブリジット・バルドー)は、母親のセシル(E・イル)や召使いたちと一緒にのびのびと育って来た。父親には早く死にわかれたが、そんなかげりもなく何不自由なく毎日を楽しむジル。 だが彼女にもたった一つの悩みがあった。舞台演出家志望の青年ファビオ(マルチェロ・マストロヤンニ)に恋しているのだが、相手は舞台の勉強にうちこんで一向に彼女のことをかまってくれないのだ。ジルはダンスが大好きだった。彼女はよく町の教習所に行き友達のカルラやディックと稽古にはげんだ。そのうちディックがパリでの仕事をつかんだのを機に、彼と同行して新しい生活を始めようとジルは家をとび出した。パリの華やかで自由な空気は、ジルをたちまち虜にし、パリもまた美しいジルをほうってはおかなかった。彼女はコーラスガールを振り出しに、ファッション・モデル、映画女優と転々。ついにジルの一挙手一投足が新聞ダネになるようになった。今やジルは、日々のゴシップや押し寄せるファンにたえられなかった。静かな田舎が恋しくなったジルは、湖畔の家へ逃避した。ここでジルはファビオに再会した。彼は故郷の町で上演する劇の準備に没頭していた。二人の恋はよみがえり、ジルは彼のアパートで住むようになった。だがここでもジルは人々の眼からのがれることは出来なかった。自殺まで計るジル。その中、ファビオは劇を演出するために故郷の町へ帰って行った。ジルも彼の芝居に出ようと後を追った。その町スポレートでは、失踪以来ジルが初めて姿を現したというので野外劇場に群集が押し寄せ、負傷者が出るさわぎとなった。いよいよ開幕の夜、出場を断念したジルは舞台を一目みたいと舞台の見えるバルコニーから身をのり出した。その瞬間、待機していた報道陣のフラッシュがとび、驚いたジルは転落死した。ファビオに抱かれたジルの表情は、初めて平和をとりもどしたようになごやかだった。