物語は一九三九年七月のパリにはじまる。医学生ジェロオム(ジャン・マレー)と女子医学生クラウディア(アリダ・ヴァリ)は夏休みでクラウディアが故郷イタリアに帰省する直前、ともに想いを打明けた。数週間後、ジェロオムはフローレンスへ行き、二人は美しいフローレンス郊外のホテルで夢のような幸福に浸った。だが、九月に起った戦争が二人を引裂いた。ジェロオムはフランスへ戻って戦争に参加しなければならなかったのだ。そして敗戦--捕虜となったジェロオムは収容所から脱走してパリに戻ってきた。そのころすでにクラウディアとの文通も絶え、彼は彼女の面影を追いながら闇商売に身すぎをするようになっていた。結婚をしたが失敗だった。ジェロオムはついに意を決してイタリアを訪れた、クラウディアを求めて--。行方も知れぬ彼女を探してあてない旅の末、ようやくジェロオムがある病院の看護婦をしているクラウディアと再会したとき、彼女には男がいた。別離の時があまりにも長かったのだ。クラウディアは、しかし、身を引こうとするジェロオムを止めた。もう一度、むかしの情熱は戻らぬものか--二人はあの奇蹟のような数日を再び求めて思い出深いフローレンス郊外のホテルを訪れた。だが、戦争は、ここをもすっかり変貌させていた。静かだった当時を偲ぶすべもない観光客の雑閙、喧騒。その中で二人の心はどうしても触れ合えなかった。やはり、奇蹟は一度だけのことだったのか--クラウディアは一人静かに去って行こうとした。が、今度はジェロオムが彼女を引止めた。幸福は二人が協力して築いて行かなくてはならないのだ。そう思って二人は、新しい人生への第一歩を踏みだそうとするのであった。