重病の床に臥す母親(M・カルディナール)とアル中でまともに働く気力もない父(P・エベール)、乳離れしない妹、そして兄を持つ十四歳の少女ムシェット(N・ノルティエ)は、フランスの片田舎で貧困生活を送っていた。僅かな酒の密売でその日の糧を得て暮していたが、父はどうしてこんなに邪慳なのかと思われるくらいムシェットに当たり散らし、学校にいっても誰からも相手にされない孤独な少女だった。ある日、学校の帰り道、ムシェットは森の奥深く入って道に迷ってしまった。その頃、森で鳥や兎の密猟がしきりに行われており、これに対して監視の眼を光らせるのが森番のマチュー(J・ヴィムネ)の役目だった。彼は密猟のアルセーヌ(J・C・ギルベール)がワナを仕掛ける現場をつきとめ、争いになった。二人は密猟者と森番という対立的な立場にあるばかりでなく酒場女のルイザ(M・トリシェ)を奪い合っている恋仇でもあった。その場は、森番マチューがアルセーヌの持っていた酒に酔いしれたために無事収まった。その夜、雨でビショ濡れになり道に迷ったムシェットをアルセーヌが見つけ自分の小屋に連れ帰った。酔っ払った彼はムシェットの濡れた服を乾かしてやりながら、森番を殺したと告白して、彼女にアリバイ工作を頼んだ。そして持病のテンカンの発作を起こしてムシェットを驚かせたが、発作がおさまると乱暴にムシェットの肉体を奪った。その夜更け、ムシェットは逃げるように家に帰ると、母親は苦しそうにもだえていて、父も兄もいなかった。そして、二人が戻ってきたときには、母は死んでいた。父は相変わらず彼女に当たり散らすだけだった。赤ん坊に飲ませるためのミルクを買いにいった食料品店の女主人(R・シャブラン)だけが彼女をなぐさめてくれ、コーヒーとパンを恵んでくれたが、コーヒー茶碗を壊すと掌を返すように叱りつけた。店を出ると、ムシェットは、アルセーヌが殺したはずの森番に出会った。アルセーヌはアル中に持病のテンカンも加わって記憶錯乱と幻想癖があり、森番を葬ってルイザを一人じめしたい一心から殺したものと思い込んだらしい。問いつめられて、昨夜アルセーヌと一緒にいたことを白状したムシェットは、森番の妻(M・シュジーニ)から罵声を浴びせられた。どこへ行っても、ムシェットには孤独と絶望感がつきまとった。彼女にとって今や死ぬことだけが望みであり喜びであり、救いであった。顔見知りの親切なお婆さん(S・ユグナン)にもらった晴着を胸に、池の堤に身を横たえた。やがて彼女の姿は水面から消えた。それが薄幸な十四歳の少女ムシェットの永遠の“救い”の瞬間であった。