フランス北部の小さな村アンジュバンは、村長パントン(J・P・マリテル)が経営するカフェと映画館で、村人たちは楽しい時を過し、村長の愛娘マリー(M・ケラー)が小川で泳ぐのを眺めて目を細めているという平和な村だ。みな溌刺として美しいマリーを愛していた。マリーの唯一の気がかりは学校の先生ガブリエル(P・ノワレ)。マリーを愛していながら結婚を申し込むことができない内気な先生だ。みんなヤキモキするがどうにもならない。そんな時、マリーは“海の女王”コンテストの出場資格を得て、ノルマンディのコンテスト会場に出発した。ノルマンディの港にはアメリカの大富豪ブロデリック・マック・パワー(B・コンビー)の豪華なヨットが碇泊していた。その朝彼の四番目の妻がプロレスラーと馳落ちしたニュースを見て、彼は秘書に四番目の妻との離婚と五番目の婚約発表を命じ、その婚約者には今晩決定する“海の女王”にすると勝手にきめてしまった。そうとは知らないマリーは見事、“海の女王”の栄冠をかちえ、会場からさらわれるように高級ホテルへ迎れられ、シャンパンと花束、そしてハンサムなブロデリックとのダンス。マリーはこれすべて、コンテストの景品と思っていた。ところが翌朝の新聞は大見出しで、アメリカの大富豪と海の女王マリー・パントンの電撃婚約を報じていた。一方、遅ればせながらマリーにプロポーズしようとガブリエルはオートバイでノルマンディへと向かっていた。ブロデリックの猛烈なペースにびっくりしたマリーは、あわてて逃げだし、これを見たブロデリックは逆に感激してしまった。自分をフル女がこの世にいたとは!ブロデリックは本気になってマリーをくどき落しにかかった。電光石火の早わざでマリーをニューヨークへさらったブロデリックは彼女のホームシックを見て、なんとアンジュバンを村ごとそっくり建物から人間までをマンハッタンに移しかえてしまった。しかし、いきなり出現したアンジュバンに観光客の好奇の目が注がれ、アンジュバンの人々はノイローゼとなってしまった。ブロデリックはやっと気がついた。マリーがまだアンジュバンに唯一人残っているガブリエルを愛していることを……。やがてマリーもアンジュバンも元の位置に戻ったころ、ブロデリックは新しい事業に熱中しはじめていた。