18世紀終わりのポーランド。独立を失い、3つの軍事勢力が国を分断し、大動乱が各地で起きていたそんなある日、陰謀を企んだかどで精神病院に囚われていた若者ヤコブ(レシェック・テレシンスキ)は、プロシア人の奇妙な小男(ヴォイツェフ・プショニャック)に助けられ、脱走に成功する。実は彼はスパイに身をやつした悪魔なのだが、それに気づかないヤコブは自分の家を目指し、国中を歩き回るが、やがて彼は、祖国やそこに住む人々の、荒れ果て、すさみきった心に強い衝撃をうけ、次第に心の均衡を崩してゆく。そして悪魔から渡されたカミソリで、自分の母親(イガ・マイエル)、兄、妹、そしてたくさんの人々を衝動的に殺してしまう。悪魔の誘惑から脱け出そうとヤコブは必死に苦悩するが、時すでに遅く、遂に彼は自ら命を絶ってしまう。そしてスパイを続ける事に疑問を抱き始めた悪魔は、ひとりこの荒涼とした国土をさまよい続けるのだった。