まだ明けやらぬパリの街を一台の乗用車が疾走してくる。運転しているのはマドレーヌ・ジラール(A・ジラルド)という上品な婦人だ。彼女はあるテレビ局に駆け込むと守衛が呼びとめるのも聞かずに、自分をテレビに出して下さい、と懇願する。マドレーヌは事情を説明した。彼女の一人娘ロランスが、昨日、学校の帰りに何者かに連れ去られ、その日のうちに犯人から電話があった。娘の身代金250万フランをもってこい、ただし絶対警察には知らせるな--。マドレーヌは犯人の言いなりになるつもりだったが夫のベルナール(B・フレッソン)が警察に連絡してしまい、そのことを犯人が察知し、逃亡してしまった。だからテレビを通じて犯人に直接話しかけたいと言うのだ。テレビ局はマドレーヌの必死のたのみを聞く。しかしテレビを通じてこの事件を知った報道陣や、民衆たちが興味本位から、マドレーヌの家に押しかけてくる。家に帰ったマドレーヌは、この好奇の目に怒りを感じながらも、夫と前夫との間にできた18歳になる息子ミッシェル(S・ヒレル)と共に犯人からの連絡を待つ。翌朝、ミッシェルが郵便受けの中から犯人からの手紙を発見する。犯人の指定どうり、250万フランを持って一人で車を走らせたマドレーヌは、約束の場所で、悲しみのあまり愕然とする。何と、ロランスは殺されており、しかも青いゴミ袋の中に入れられて……。この誘拐事件を担当しているボラール刑事(H・クリューガー)は、この犯行が、金目当てのものでなく、身近な者の手によって行なわれたことに気がつく。マドレーヌが今の夫と再婚し、ロランスが生まれ、ロランスに愛情がそそがれることに不満をもつ人物--。マドレーヌにもだんだんとわかってきた。息子のミッシェル--。自らがよんだ悲劇に、終結をつけようと、息子のミッシェルをのせたマドレーヌの車がパリの街に炎上する。