ヨーゼフ(ヤン・ノビツキ)は、サナトリウムに療養中の父に会うため列車に乗った。サナトリウムは郊外の静かな森の中にあり、異様に大きな扉が正面にそびえている。その扉を入ると中は幻想的ともいえる世界だ。厳格そうだがどこか俗物の感じが漂う医者。可憐な顔をしていながら挑発的なポーズでせまる看護婦。そしてめぐり会えた父は、しかし病室で死人のように横たわっていた。ふと窓から外をのぞくと、そこは彼の幼年期の情景になっている。彼の父と母、召使いのアデル。友人の男女、父の知人の商人、助手たち。そして、ヨーゼフを溺愛する母……。時間の流れは重複し、いつの間にかサナトリウムの中は、万華鏡のごとく交錯する。たった数分前までは宴が開かれていた食堂はくもの巣のおおう廃室となる。ヨーゼフはサナトリウムからの脱出を試みる。しかし出口はわからない。そのサナトリウムとは、いったいどこなのだろうか……。