猟をしていた地主のベルセネフ(オレーグ・タバコフ)は、その帰り道、突然雷雨に襲われ近くの小屋に雨やどりのために寄った。そこは、森番フォーマ(ミハイル・ゴルボヴィチ)の家で、娘のウリータが乳呑児を面倒みて留守番をしていた。そのそまつな家は、貧しい生活ぶりを反映していた。フォーマは、通称“狼”〈ビリューク〉と呼ばれ、その鋭い眼光と無口な人柄で百姓たちから恐れられていた。彼は妻に逃げられ、幼い子供二人を男手一つで面倒みていたが、孤独感はつのっていた。彼は、どんなに事情がある者でも森を犯した者には厳しかった。この日も捕われた哀れな百姓に同情するベルセネフの態度に反し、フォーマは冷たくつきはなした。ある日、森が大雨に見舞われ、森に出ていたウリータが雨にうたれ気を失っていた。急いで小屋に連れ帰り自らの衣服を身体にまきつけ温めてやるフォーマ。翌朝、元気に起きあがるウリータ。しかし、フォーマに悲劇がおとずれた。木かげで休んでいた彼に、狩猟をしていた貴族の流れ弾が当ってしまったのだ。誰もそれには気がつかない。一方には、貴族たちが森の中で食べのこしていった菓子を無邪気に食べるウリータと赤ん坊の姿があった。