木々に囲まれた木造りの家で母親(マルガリータ・テレホワ)はいつももの悪いに耽つていた。一面の草原にたたずむ彼女に行きずりの医者(アナトリー・ソロニーツィン)が声をかけるが、彼女は相手にしない。息子(イグナート・ダニルツェフ)が家の中にいると、外では干し草置場が火事だと母が知らせに来た。1935年のことだった。その年、父は家を出ていった。そして今、母からの電話で息子は夢から醒める。彼女は、セルプホフカ印刷所で働いていた頃の同僚の死を知らせてきたのだが、息子は母に夢をみていたことを知らせる。両親と同様、彼も妻のナタリア(マルガリータ・テレホワ)と別れた。彼は、母に似たナタリアを時々母と間違える程、母への執着が強い。そしてことごとく、林に囲まれた木造りの家と母の姿を思い出す。母もナタリアも彼には哀れに感じられる。大戦中、モスクワからユリエヴェツに疎開した時、祖父の知人をたずねて行き、宝石と引きかえにお金を借りようとし、肩身のせまい想いをした時のことなど、彼にとって脳裏に鮮かに焼きついている幼い頃のことが思い出される。そして広い草原の夕暮時を彼の子供たちが歩く。