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「明日の空の向こうに」公開記念特集


 第61回(2011年)ベルリン国際映画祭にてジェネレーション部門グランプリおよび平和映画賞を受賞したほか、各国の映画祭で大絶賛を浴びている「明日の空の向こうに」。

 本ページでは、「明日の空の向こうに」の日本公開を記念して行われた第1KINENOTEユーザー特別試写会の様子や参加ユーザーのレビューをご紹介し、作品の魅力をお伝えします。
 本作は1月26日(土)より、新宿シネマカリテ(新館オープニング記念作品)他にて全国順次公開となります。これをきっかけに劇場へ足を運んでいただけたらうれしいです!

❐ 「明日の空の向こうに」

 2011年、日本で公開され、全国興行収入1億円を突破して同年のミニシアター系最大のヒット作となった「木洩れ日の家で」。同作でひとりの老女の晩年の姿を美しいモノクロ映像とともに詩的に描き、日本中に深い感動を与えたポーランドの名匠ドロタ・ケンジェジャフスカ監督の、待望の最新作です。

 今度の主人公は、たくましく生きる3人の子どもたち。彼らは今よりもいい暮らしを夢見て、生まれ故郷である旧ソ連の貧しい村から抜け出すために、国境を越える旅に出ます。ケンジェジャフスカ監督が、自身の最も得意とする題材=子どもたちの世界を詩情豊かに描いた、会心の一作です。



❐ 特別試写会レポート

1月15日、第1KINENOTE ユーザー特別試写会「明日の空の向こうに」が開催されました。前日に積もった雪によりお足下の悪い中、多くのユーザーの方に足を運んでいただきました。年齢も性別もさまざまな映画ファンの方が一堂に集まり、終始よい雰囲気でイベントを行うことができました。

 作品上映前には、本作の共同製作出資者でもあるパイオニア映画シネマデスク代表取締役の丹羽高史さんによるトークショーがありました。今回は、事前に行ったインタビューの内容と合わせまして、その貴重なお話をみなさまにご紹介したいと思います。



――1年間、365日のうちの14は海外での生活とお聞きしましたが。

 

パイオニア映画シネマデスクを設立する前は、日本ヘラルド映画社に在籍していました。その時の経験を生かし、弊社では外国映画の買付けや配給をやっています。だから今でも、大小を問わず、世界中の映画祭にできるだけ足を運ぶようにしています。

 

――本作「明日の空の向こうに」では共同製作・出資をされていますが、その経緯についてお聞かせください。

 

ドロタ・ケンジェジャフスカ監督の「カラス達」(近日日本公開予定)という作品を観て、以前からすごく気になっていたんです。偶然にもその後、監督作品「僕がいない場所」をベルリン国際映画祭で、「木洩れ日の家で」をグディニア映画祭で買付けて、日本で公開しました。「木洩れ日の家で」が日本で大ヒットしたことには、彼女自身びっくりしていました。

監督作品を続けて配給することで彼女とも距離が縮まり、釜山の映画祭の帰りのタクシーの中で、「新作映画の製作資金がちょっと足りないので、出資してくれないか」と彼女自身に頼まれたのですよ。その時には、実話を基にした、3人の子どもたちを描いた映画になるということくらいしか聞かされませんでした。しかし、映画クリエーターとしての彼女を信用していましたから、すぐにOKの返事をしてしまいましたね(笑)。

  

――ドロタ・ケンジェジャフスカ監督作品のどのようなところに魅力を感じますか?

 

恵まれた環境にいない子どもたちを描きながらも、暗くなりすぎず、はたまたハッピーエンドでもなく、最後にはちょっと希望を含ませたような描き方が好きなんです。

また、監督のパートナーでもあるカメラマンのアルトゥル・ラインハルトのカメラがすごくいい。リドリー・スコット監督なんかとも仕事していて、ポーランドを代表するカメラマンの一人です。

 

――ポーランドを含めた東欧の映画事情はいかがですか?

 

ポーランドでも「明日の空の向こうに」みたいなアート系の作品は1,2週間くらいで公開が終わってしまいます。上映される劇場があまりなくて、例えば日本でもおなじみのアンジェイ・ワイダ監督の「カティンの森」ですら同じ状況のようです。シネコンではハリウッド大作が幅を利かせています。今の日本と映画産業の状況は変わらないかもしれないですね。

ただ、ポーランド政府は映画製作に力を入れていて、製作費の70%くらいは出資してくれるようです。

また、ポーランドのウッジには、国からの運営援助のある映画学校があり、学生が世界各国から学びに来ているそうです。日本からも留学生が2人いるらしく、将来が楽しみです。

 

――最後に、この映画の見所はどこでしょうか?

 

「明日の空の向こうに」は第61回(2011年)ベルリン国際映画祭のジェネレーション部門グランプリと平和映画賞を受賞しています。作品のクオリティはお墨付きですが、中でも特筆したい点は、オーディションで選ばれて本作に出演している3人の子どもたちが、演技経験のない子どもたちということ。自然体ですごくいいですよ。ただ残念なことに、出演している3人のうち1人は、家族でチェチェンから亡命しようとして捕まり、未だに消息不明だそうです。平和に暮らしている日本人には想像がつかないことですが。

あと映画の最後に「鶴は飛んで行く」という歌がかかるのですが、作品のテイストに合っていて感動的です。実は監督も大好きで、以前からこの歌を使って映画を作りたいという願望はあったようです。先程申し上げたように、もちろんカメラも素晴らしいので、少しでも多くの人に見てもらいたいですね。




❐ KINENOTEユーザーレビュー


 試写会に参加していただいたユーザーの方による「明日の空の向こうに」のレビューを、いくつかご紹介いたします。その他にもたくさんの方々にレビューを書いていただきましたので、是非作品詳細をご覧ください!



「ズルい映画だか、許せるズルさだ」

 映画界では、洋の東西を問わず、どんな名演も子どもと動物の可愛らしさにはかなわない、と言われている。だから、もの心がつくかつかないかわからないような、幼い男の子が活躍するこの作品は、どんなに内容が凡庸でも良く見えてしまう、「ズルい映画」になるだろうと見る前から思っていた。実際に、確かに「ズルい映画」だったが、このズルさは許さざるおえなかった。それくらい、この作品の子どもたちと純真さあふれる内容に、心をわしづかみにされてしまった。

物語は、新しい未来、希望を抱いてポーランドからロシアへと、密入国の旅をするだけのシンプルなものだ。しかし、シンプルとは言え、高圧電流の下をかいくぐらなければならないことや、食べ物を乞うことなど、厳しい現実と相対しなければならない子どもたちの姿は、哀れしかない。それでも救われるのは、どんなときでも可愛らしい笑顔を絶やさない、泣き顔などほとんどない明るさが、作品全体を盛り上げていることだ。屈託のない子どもたちの笑顔、中でもいちばん下のペチャの明るさは、宝石にも勝る輝きを見せてくれる。私たち大人は、以前の自分に懐古することが好きだが、懐かしさに浸ることだけで虚しさがつのるだけになる。しかし、子どもたちは明日しか見えていないから、屈託なく笑い、希望を恥ずかしげもなく叫ぶこともできる。この作品には、希望に満ちた子どもたちを大人たちはどのように受け入れるべきかを、あらためて教えてくれているようだ。

 ただ、大人の社会に希望があるのかどうかは微妙のようだ。この作品、昨今の映画の中でもタバコを吸うシーンが大変多い。子どもたち、ペチャさえもプカプカとたばこを吸っている。それが、子どもたちの未来を暗示しているようだ。ポーランドやロシアへの社会や未来への警鐘を、たばこのシーンの多さで打ち鳴らしている演出は、おそらく監督が最初から狙っていた、このむ作品における社会性だったのだろう。ペチャたちの歯の裏の黒いヤニが、ポーランドや私たち日本の未来そのものでないことを祈るばかりである。

「監督の母性」
ドロタ監督の作品を見ると監督自身の母性を感じずにはいられない。
子どもたちをみつめる眼差しが具にカメラに捉えられていて素晴らしい。
今回の作品では孤児たちを扱っているにも関わらず、
悲哀に満ちたところはほとんどない。
むしろ子どもたちが自由奔放にたくましく生きているさまを美しい映像で捉え、
見るものに希望さえ感じさせる。
子どもたちの目線から世界をみるという貴重な体験のできる一作である。

「子役の演技が辛抱たまらん」

子役戦国時代の今、芦田愛菜ちゃんや鈴木福くんをトップとして数多くの子役たちが活躍している。なるほど彼らのそつないセリフ運びや泣きの演技、更にはバラエティ番組での立ち振る舞いなど、まさに大人顔負けな活躍っぷり。しかし、天才とまで称される彼らの演技には、子役でありながら子供らしさが希薄だ。おそらく彼らは一端の俳優としてキチンとした演技をしようとしているせいで、本来子役が持つべき子供の生々しさというものが薄れてしまったのではないか(単に監督が子役にそのような演技を求めてないだけかもしれないが)。しかし、これでは子役をやる意義がなくなってしまう。少なくとも僕が子役に求めるものは良くも悪くもの屈託のなさなのだから。

「明日の空の向こうに」はその点で完璧だった。演出やカメラワークなど語る点が多い映画だと思うが、何より子役たちの真に自然体の演技に心底感動した。子役同士のじゃれ合いや遠慮のない会話の感じなんて映画を観ていることを忘れるくらいリアル。何より素晴らしいのは、ペチャ(オレグ・ルィバ)の鼻くそホジホジの場面。あの他者と関係なく時間が進んでる感じは本当に上手く子供の奔放さを表している。また、取り巻きの大人たちもただ優しいだけではなくて、時に邪険に子供たちをあしらう様子は、子供は単に可愛いだけの存在ではないことを示唆してるように思えて、確かに現実の子供は面倒くさいことも多いなと膝を打った。

以上の通り今作は子役の演技の素晴らしさという点で「禁じられた遊び」や「スタンド・バイ・ミー」といった子役クラシック映画と比肩しうる作品だ。もちろん子役の演技にクローズアップせずとも、純粋に子供たちの冒険活劇として十分楽しめる。しかし、何より鼻くそホジホジで感動できる映画は他にはあるまい。

「美しい映像が困難を克服する3人を讃えている」

 映像が美しい映画である。草原や大地を走り回る子供たち、空や水辺の光をとらえた映像がきらびやかで特に美しい。駅舎を駆け回るオープニングシーンから子供たちの躍動感に溢れていて、生命力が漲っている。それが本作の一つの特長であるが、私は映画の映像はきれいであればよいとは考えていない。きれいであること、美しいことが、映画の中で持っている意味に私は注目したい。

 この映画の場合、それは何か。きれいであること、美しいことは生の歓喜であり、身寄りのない3人の孤児が明日を求めて懸命に生きている姿を讃えているということだろう。旧ソ連の貧しい村から隣のポーランドに行けば豊かな暮らしができると信じて、3人は国境を超える旅に出る。炭焼きの老人やトラックの運転手や花嫁さんに出会って、優しさをもらい、数々の困難を乗り越えて、越境に成功する。草原を走り回って歓喜の声を上げるが、陽光の煌めく美しい映像が彼らが初めて手にした喜びに声援を送っているようで、印象深いシーンに仕上がっている。物語の終盤で軍の護送車が3人を運んでいくが、この護送車の重々しいこと、その威圧感は、彼らを絶望の底へと引きずり戻すのに相応しい。しかし、それとは反対に、護送車の上空には温かな光が煌めき、彼らを眩しく映し出す。これは希望の存在を仄めかす鮮やかなシーンである。

 音楽もいい。東欧系の映画ではよく使われる。人生には辛いことが多いが明日を生きる勇気が湧いてくる。

 この映画の視点にも触れておきたい。孤児たちが旅の途中でカップルを見つけるシーンがある。木蔭で重なり合う男女を最年長のリャパが見つけるのだが、リャパはどこから見ているのか、ヴァーシャはどう近づいているのか、アップが多いため位置関係が分からず、私は場面をつかめなかった。ロングショットか俯瞰の構図が欲しい場面だと思ったが、監督は孤児たちの視線を重視したのである。彼らが見ている世界を彼らの視界でとらえたのだ。この視点は終始一貫している。それゆえに子供を主人公にした映画として本作は見事な秀作に仕上がっている。