地方のある小都市での出来事、鮨屋久造の息子鉄三は、美男で腕っぷしの強いところから、いつの間にか町の与太公たちに兄分と立てられ得意になっていた。やくざをうたった浪曲が何より好きで先祖の魚屋久兵衛が、播随院長兵衛からその義侠心をほめた手紙を貰って、それが家宝になっていることなどが、鉄三の心を一そうあおっていた。それを心配したのが彼の恋人で料亭「千鳥」の娘清子だったが、鉄三は清子のいさめなどはてんできき入れなかった。そして町のボス権田のおだてにのせられて、彼が市会議員選挙に立候補することについての応援をたのまれた。「男を見込んで」といわれると、一も二もなく参ってしまい金やら家宝の手紙まで持ち出しての応援であった。しかし清子が心配した通り、選挙違反で留置所入りになった上、家宝の長兵衛の手紙は、実は、久兵衛の不身持ちを意見したものと判明。鉄三の「男伊達」の夢はさっぱりと醒めてしまった。そしてやがて、鮨屋の店で丸髷姿の清子に手伝わせて甲斐々々しく立働く鉄三の姿が見られることになった。