テス(メラニー・グリフィス)は,ブロンドの長髪を切る.何者かになろうとして,キャリア風の短髪にして,パーティー会場に乗り込む.男を探しているわけではなく,仕事でのキャリアアップを望み,しかし,そこで運命の男ジャック(ハリソン・フォード)に会う.
彼女は,船で通勤している.マンハッタン島は憧れの地でもあるが,彼女は秘書から上の段階に進めていないことに苛立ちもあるようである.空撮がその船をとらえる.また最後のショットでは,高層ビルのオフィスにいる女性を窓の外からとらえ,徐々にマンハッタン島の全景を見せるように引いていく.この間に起こったのはどんなことだったのだろうか.それはただテスの夢に過ぎなかったとでも言うのだろうか.
テスは,ため息を吐く.咳払いをする.彼女のストレスは,上司のせいでもある.例え上司がテスの理想の姿に近いキャサリン(シガニー・ウィーヴァー)になっても,不満は募る.上司は部下のアイデアを自らの手柄にしようとしている,それも決して悪とは言えない社会ではあるが,キャサリンは,滑稽にスイスにスキーで遊び,滑稽に骨折をして,しばらく戦線から離れてしまう.キャサリンの悪徳や不運は,テスの呪いのせいであったようにも見える.その隙を狙って,テスはアイデアの実現に奔走し,ジャックに出会っている.
ジャックは何者なのか.彼は彼でスランプに陥っているらしい.実力と思えてたものは所詮は運でもあり,その運はいつかは尽きるのが常である.ジャックは,その運や運命に気がついていないお調子者のようにも見えている.それゆえにテスやキャサリンなど,女性にモテているのかもしれない.テスとジャックのパートナーがどうなってしまうのか,彼女と彼の仕事は日の目を見ることができるのだろうか,という点がスリルとなって物語を牽引する,もちろんキャサリンのことだから,彼女はハイになって帰ってきて,そこにも一波乱がある.コミカルでもあり,シニカルでもある.それはテス(あるいは観客)の叶わない欲望という,夢物語の裏にある悲しみのせいなのかもしれない.