コンパートメントNo.6

こんぱーとめんとなんばーしっくす|HYTTI NRO 6|COMPARTMENT NUMBER 6

コンパートメントNo.6

レビューの数

56

平均評点

73.3(227人)

観たひと

310

観たいひと

25

(C)2021 - AAMU FILM COMPANY, ACHTUNG PANDA!, AMRION PRODUCTION, CTB FILM PRODUCTION

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ラブロマンス / ドラマ
製作国 フィンランド=ロシア=エストニア=ドイツ
製作年 2021
公開年月日 2023/2/10
上映時間 107分
製作会社 Aamu Film Company=Achtung Panda=Amrion Productions=CTB Film Company
配給 アット エンタテインメント
レイティング 一般映画
カラー カラー/シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット デジタル
メディアタイプ ビデオ 他
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

場面 ▼ もっと見る▲ 閉じる

予告編 ▲ 閉じる▼ もっと見る

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

カンヌ国際映画祭グランプリを受賞したロードムービー。1990年代のモスクワ。フィンランド人留学生ラウラは恋人と行く予定だった旅行をドタキャンされ、一人で寝台列車の6号コンパートメントに乗り込む。そこでロシア人労働者リョーハと乗り合わせ……。ロサ・リクソムの同名小説を原案に映画化したのは、「オリ・マキの人生で最も幸せな日」のユホ・クオスマネン。出演は、本作でフィンランド・アカデミー賞主演女優賞を受賞したセイディ・ハーラ、「AK 47 最強の銃 誕生の秘密」のユーリー・ボリソフ、「動くな、死ね、甦れ!」のディナーラ・ドルカーロワ。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

1990年代のモスクワ。フィンランド人留学生ラウラ(セイディ・ハーラ)は、美しい大学教授イリーナ(ディナーラ・ドルカーロワ)と付き合っているが、イリーナは仲間たちにラウラのことを“フィンランド人の友達”としか紹介しない。二人は一緒にムルマンスクにペトログリフ(岩面彫刻)を見に行く旅を計画するが、イリーナが行けなくなり、ラウラは一人で旅立つ。モスクワ発の寝台列車に乗り込むと、二等車の6号コンパートメントの向かいのベッドに、ロシア人の男リョーハ(ユーリー・ボリソフ)がいた。同じくムルマンスクに行くという彼から「この列車で売春しているのか?」と言われ、堪えきれず席を立ったラウラは女性車掌に移動を願い出るが、我慢するよう言われる。列車がサンクトペテルブルクに到着する。ラウラはモスクワに戻ることを決め、イリーナに電話をするが、帰ると言い出せずに列車に戻る。彼女のいない間、リョーハが彼女の席に赤ん坊を抱えた親子を座らせていたので、ラウラは食堂車に向かう。するとリョーハも着いてきて、ムルマンスクに行く理由を尋ねてくる。ペトログリフを見に行くと知ったリョーハは驚く。彼は鉱山に働きに行くという。列車は夜更けにペトロザボーツク駅に着き、ここで一泊する。知人の家に行くというリョーハの誘いを断り、ラウラは行く当てもなく街へ出る。しかし、トラブルに巻き込まれたところを通りかかったリョーハに助けられ、彼と同行することに。リョーハが彼女を連れて行ったのは、彼らの母親ほどの年齢の一人暮らしの女性の家だった。女性は二人をもてなし、楽しい一夜を過ごす。二人はすっかり打ち解け、ラウラはイリーナが恋人であることを打ち明ける。終着駅が近づき、二人はキスを交わすが、リョーハは別れも告げずに電車を降りてしまい、ラウラは一人でホテルに向かう。翌朝、ラウラがホテルの従業員にペトログリフを見に行きたいと言うと、冬の間はツアーが休みであると告げられ……。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2023年2月下旬 キネマ旬報ベスト・テン発表特別号

REVIEW 日本映画&外国映画:「コンパートメント No.6」

UPCOMING 新作紹介:「コンパートメント No.6」

2025/03/06

2025/03/08

65点

その他/図書館 


フィンランドの微妙な心情

本作のテーマはシンプルかつ陳腐。
ロシア人でもいい奴はいるし(その比率はどうか?)、フィンランド人でも悪いやつはいる。
フィンランド人の監督の母国でのロシアはいつかまたロシアが侵略するかもしれないという言い伝えを打破したい意図もあったのかもしれないが、事はそう単純ではない。
団体、組織更に国家になるとその見えなかった本性が露顕することがあるのだから。
またモスクワに留学したヒロインが、恋人(と本人は信じているが、相手の年上の教授は同じ熱量を抱いていないのは明白)がその場の中心にいるスノッブなコミュニテイで居心地の悪さを感じながら極寒の地に旅をする寝台列車で同室となる無作法で野卑で無教養な青年との共存に当初は嫌悪感と侮蔑を感じ抵抗を示すが、ふとしたきっかけで彼の優しい人柄の良さを見出す。
必ずしも教養や知性が人柄の良さを計る物差しにはならない事はよくある。
また旅の終着駅で2人が信頼し合う関係になり乾杯をしながらも、お互いの育ってきた背景と彼の嘘(経営者ではなく単なる炭鉱労働者である)がばれることを恥じて一旦別れるが、彼女の目的地が閉鎖されていてまた恋人の彼女に対する熱量も離れてみてわかる。
最果ての酷寒の地で残された希望は偶然かつ皮肉なめぐり合わせの彼であることから、彼を探し出し彼は彼女の望みをかなえてあげるのだ。
地元である地で異国のインテリの彼女を精一杯喜ばせる彼の姿と素直さは清々しさを感じるが、彼女が当初言ったフィンランド語の「くそったれ」の言葉の意味を彼は理解していなかったであろうことは微笑ましくもあるが危うさも感じる。
本作でも言うように人は部分的にしか分かり合えないのだから。
それでも共存していくために人は理解し合う営みを繰り返すのだ。
しかし本作の公開後ロシアがウクライナに軍事侵攻した事実とロシアの現状を考えた方がより真実が見えるかもしれない。

2025/02/03

2025/02/05

95点

VOD/U-NEXT 
字幕


「人間性の現出」

ネタバレ

 フィンランド人留学生のラウラが信頼し愛している女性にあっさりと裏切られる。1人で寝台列車の6号コンパートメントに乗り込む。そこでロシア人労働者リョーハと同室になる。彼は下品で粗雑な第1印象であり、ラウラは一瞬で彼を嫌いになる。
 しかし旅を続けていくうちに、優しい男に騙され大切な物を盗まれとき彼は優しい言葉をかける。ラウラは、素朴で心優しい彼に魅かれていき彼を抱きしめる。
 リョーハは、ラウラを抱きしめたがやがて手を放していく。それは男の優しさであり現実だったからだ。そしてリョーハは消える。
長旅を終えムルマンスクに着いた。目的のペトログリフを見に行こうとしたところ誰もが雪で行けないという。そこでラウラはリョーハを頼る。リョーハはすぐにラウラのもとに駆けつける。
 なんとかペトグリフを見て、ラウラとリョーハの愛が解き放たれる。光と影が風景に溶け込み二人の思いの強さをカメラに刻み付ける。
 リョーハと別れ、車に残ったラウラにリョーハからのメモ書きが。そこに書かれたのを見てまぶしい陽光のなかラウラの微笑みが印象深く胸に残る。ステキな恋をしたという表情だ。100分ほどの時間で、ほぼ動きがない、いわゆる小粒な映画なのにこんなにも感動を与えてくれる。映画はまさにマジックだ。

2024/11/09

2024/11/09

67点

VOD/U-NEXT 

・ロシア最北端の駅になる岩画を見る旅 主人公ラウラが同行予定の彼女がキャンセルになり、それでもラウラ一人で列車にのり向かう、客車で同室となったぶっきらぼうでガサツなロシアリョーハとの交流が繊細に描かれる
・初対面から酔っ払い絡むリョーハ、出発が最悪ながら、徐々に交流が進み、リョーハの寄り道する老婆宅訪問やフィンランド人同行者が同室でいる中のすねたリョーハとビデオ盗難を通して、さらに交流は深まる かわす言葉の一言一言が自然体で、リアルな人間が感じられる
・狭い車中、カメラがラウラに寄っての撮影となり、こちらも窮屈感を感じられる さらに最後の岩画の町のの凍てつく雪も閉鎖的で重々しい雰囲気が感じられる

・目的地である岩画がいまいちわからない、リョーハのおかげでたどり着けた様なカタルシスが乏しかった
 

2024/11/06

2024/11/06

60点

テレビ/有料放送/WOWOW 
字幕


描かれた線と線と

長距離列車に乗れば,その席は当然のように相席である.走行の騒音が聞こえている.窓からは沿線の景色だけではなく,夜の光が漏れてくる.客室乗務員は,機械的で冷たい.こうしたロシア人ばかりの移動環境にひとり寂しく入り込んできたのは,フィンランド人のラウラ(セイディ・ハーラ)である.
彼女は普段,知的な会話の中にあって.恋人で大学教授のイリーナ(ディナーラ・ドルカーロワ)とお楽しみ中の時もある.しかし,イリーナに半ば追放されるようにして,ラウラは,ムルマンスクへ向かう.そこでペトログリフを観るために,ロシアの僻地へと向かおうとしている.
そんなラウラが列車で相席しているのは,ロシア人のリョーハ(ユーリー・ボリソフ)である.彼はがさつでラウラは迷惑そうな顔を隠さない.彼女は硬い表情をしており,そのこともラウラに早々に指摘されてしまう.
ラウラはソニーのビデオカメラを回している.のちにソニーのウォークマンを聞いていることもある.安っぽいような曲が聞こえてくる.ビデオカメラは記録的なものでもあるが,偶然に映ってしまうもののある.列車は時々,ある駅で長時間にわたり停車する.乗客たちはその時間を使って,その地にそれぞれ散っていくこともある.ラウラは,異郷で寂しくなってしまったのか,頻繁に恋人に連絡を取ろうとするが,恋人はつれない.そして,ある電話ボックスでの出来事をきっかけに,ラウラはリョーハの親切に触れ,彼との隔たりが消えかかる.二人が訪れた老婦人の家で,婦人は心の声の話をしている.ウォッカがわりの密造酒を飲みすぎるとラウラは寝坊をして列車の出発に遅れそうになる.
相席は相席を呼んでいる.孤独な旅人はギターを爪弾き,しみったれた歌を歌い出す.犬に導かれて散歩することもある.列車はペトログリフのある都市に達するが,駅から先の道は冬季通行止めになり,ペトログリフに到達することはできない.それでも採石場で労働していたリョーハの力をかり,海のように広がる水面のところまでラウラは達している.そこにペトログリフがあるのかは定かではない.ただ打ち捨てられた船があり,まだどこかへと続きそうな感覚がある.似顔絵に描かれた鉛筆の線が,まだ続くような.

2024/11/03

2024/11/03

95点

VOD/U-NEXT 
字幕


極北で呼応する孤独な愛

不器用な男と女を主役に据えたロードムービー。世界最北端の駅ムルマンスクまで訪れる壮大なスケールは圧巻であり、携帯もスマホもなくヒロインが電話ボックスに走る時代設定も絶妙だ。

状況説明は最小限に止まる。恋人に振られたヒロインが乗るのはモスクワ発寝台列車。言語も国情も違う海外ならではの異国情緒漂うシチュエーションに期待は膨らむ。

乗り合わせたのは粗野な輩といった風情の青年。最悪の出会いをスタートにふたりが少しずつ心を通い会わせていく繊細な描写は見事。手持ちカメラによるリアルな映像も効果的。最後の夜、ヒロインの求愛を拒んだ青年。目的地に辿り着き青年は忽然と姿を消す。

しかし物語には続きがあった。ヒロインの呼び掛けに応えてホテルに姿を現した青年。ペトログリフ(岩面彫刻)を目指す第二の旅が始まる。表面的な美しさではなく本当に大切なものに気付いたヒロインの成長潭にも思えるが、新しい愛の始まりと解釈すると実に感動的な結末である。

男女の距離感に監督の同郷アキ・カウリスマキの影響を感じた。荒涼とした雪景色の中で束の間じゃれあうふたりに胸が張り裂けそうになる。紛うことなき傑作の誕生である。

2024/10/24

2024/10/24

83点

テレビ/有料放送/WOWOW 
字幕

備忘メモ:
あんな泥酔野郎が同室だったら、絶対に心を許さないだろう、と思うのだが、徐々に許してしまうのが自然に演出されていて、ストーリーテリングの上手さを感じた。
結局イリーナに対しては、その生き方等が憧れの対象で、今となっては「まなざしだけが愛おしい」だけになってしまったのかも。そもそも北極圏の場所に「車で行けるわよ」というのも安易だし、ドタキャンするし、ラウラが旅行先から電話しても、ツレナイ返事で直ぐ「電話切っていい?」って聞くし、、、
真剣にペトログリフを見に連れていってくれたのは、実はリョーハ。彼には何か言えない生い立ちや現状があるのだろう、でも、それは作品内では明かされない(不治の病で、母親にお金残す為に、鉱山で働こうとしたのかなか、と想像しちゃった。)。結局、ペトログリフって大した絵画じゃなさそうだったけど、これを見れた以上の何かをラウラに残した。
一見人が良さそうな同郷フィンランド人が、実は悪人だった。イリーナとの思いでが詰まったカメラが奪われた(人間、見た目で判断しちゃダメ)。それを語るイリーナとリョーハの会話をバックに、明かりが遠くになっていく。イリーナの思い出が消え去り、これから始まる瞬間だ、と感じた。
良い旅だったかどうかは、目標を達成する、というよりも、偶然の出会いが左右するんだねぇ。
ラストシーンの手紙が、似顔絵とクタバレ、良いねぇ~

撮影は終始ハンディカメラの様なもので写された感じ。手作り親近感が沸くし、偶然性を撮るにはピッタリかも。

ラウラとリョーハの関係性の変化;
最初は泥酔のリョーハの同室が嫌で、サンクトペテルブルクで下車したラウラだけど、イリーナに電話すると「まさか、もう戻ってくるんじゃないわよね?」とツレナイ。イリーナのもとへ戻るに戻れず、またコンパートメントNo.6へ戻る。そこには母子がいたが、一緒に乗車する。二人でレストランに行き、少しだけ、お互いのことを話す。一泊停車の駅で、リョーハは「知人の家に一泊するけど、どう?」と誘う。当然拒否するラウラだが、公衆電話からイリーナに何度も掛けるも不在で、他の男から「いい加減にしろ」と言われ、リョーハが助けてくれる。少し彼に気を許し始めたラウラは着いていく。そこは、彼の母の家だった。母と仲良くなるラウラ。翌朝またコンパートメントNo.6へ戻る。同郷フィンランド人が乗車の件で困っていたので、同席させてあげる。不機嫌なリョーハ。そして、同郷フィンランド人は下車するが、カメラを盗まれたことに気づき憤慨するラウラ。じっと寄り添うリョーハ。気分が鎮まるラウラ。二人はレストランで新たな出発を祝う。ラウラがリョーハの寝顔の似顔絵を見せると、上手いね、と喜ぶ。良い感じになってきて、ラウラが自分のアドレスを渡そうとすると、「この先、何が起こるか分からない」と拒否するリョーハ。きっと何かあるんだ。コンパートメントNo.6に戻り、優しく抱擁するラウラ。軽くキスするが、それ以上の関係を望まない様子のリョーハ。目的駅に着くも、既に下車したリョーハ。そして、、、という流れ。ここに至るまでの、二人の気持ちの揺れ具合が素敵な作品でした。