土を喰らう十二ヵ月

つちをくらうじゅうにかげつ|----|----

土を喰らう十二ヵ月

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レビューの数

84

平均評点

74.2(298人)

観たひと

403

観たいひと

34

(C)2022『土を喰らう十二ヵ月』製作委員会

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ヒューマン / ドラマ
製作国 日本
製作年 2022
公開年月日 2022/11/11
上映時間 111分
製作会社 『土を喰らう十二ヵ月』製作委員会(日活=バップ=読売新聞社=信濃毎日新聞社=日販=スターキャット=二見書房=スモーク)(制作:オフィス・シロウズ)
配給 日活
レイティング 一般映画
カラー カラー/ビスタ
アスペクト比 ヨーロピアン・ビスタ(1:1.66)
上映フォーマット デジタル
メディアタイプ ビデオ 他
音声 5.1ch

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督中江裕司 
脚本中江裕司 
原案水上勉
(『土を喰う日々 ―わが精進十二ヵ月―』(新潮文庫刊)『土を喰ふ日々 わが精進十二ヶ月』(文化出版局刊))
音楽大友良英 
料理土井善晴 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演沢田研二 ツトム
松たか子 真知子
西田尚美 美香
尾美としのり 
瀧川鯉八 写真屋
檀ふみ 文子
火野正平 大工
奈良岡朋子 チエ

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

水上勉による料理エッセイを原案に「ナビィの恋」の中江裕司監督が沢田研二主演で映画化。長野の山荘で犬一匹と暮らす作家のツトムは、山の実やきのこを採り、季節の移ろいを感じながら原稿をしたためる日々。だが13年前に亡くした妻の遺骨を墓に納められずにいた。共演は「ラストレター」の松たか子、「青葉家のテーブル」の西田尚美。原案エッセイの中に登場する豪快にして繊細な料理を再現したのは、料理研究家の土井善晴。2022年第96回キネマ旬報ベスト・テン主演男優賞受賞。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

立春。作家のツトム(沢田研二)は犬のさんしょ、そして13年前に亡くなった妻の八重子の遺骨と共に人里離れた信州の山荘で暮らしている。口減らしのため禅寺に奉公に出され、9歳から精進料理を身に着けた彼にとって、畑で育てた野菜や山で収穫する山菜などで作る料理は日々の楽しみのひとつであった。とりわけ、担当編集者で恋人の真知子(松たか子)が東京から訪ねてくるときは、楽しさが一段と増す。皮を少し残して囲炉裏であぶった子芋を頬張る真知子。そんな彼女の喜ぶ姿にツトムは嬉しさを隠しきれない……。立夏。山荘から少し離れたところに、八重子の母チエ(奈良岡朋子)が畑を耕しながらひとりで暮らしている。ツトムが時折様子を見にいくと、チエは山盛りの白飯、たくあん、味噌汁でもてなす。だが八重子の墓をまだ作っていないことを、今日もチエにたしなめられるのだった。自家製の味噌を樽ごとと、八重子の月命日に供えるぼた餅を持たされ、ツトムは帰路につく……。小暑。塩漬けした梅を天日干しにする季節。ツトムが世話になった禅寺の住職の娘・文子(檀ふみ)が山荘を訪ねる。住職に習った梅酢ジュースを飲みながら昔話をするふたり。文子は、亡き母が60年前に住職と一緒に漬けた梅干しを持参。「母は、もしツトムさんに会うたらお裾分けしてあげなさい、と言うて死にました」と文子。その夜、ツトムは作った人が亡くなった後も生き続けている梅干しの味にひとり泣く……。処暑。チエが亡くなった。義弟夫婦(尾美としのり、西田尚美)に頼まれて山荘で葬式を出すことになったツトム。大工(火野正平)に棺桶と祭壇、写真屋(瀧川鯉八)には遺影を頼み、通夜の支度に大忙しだ。東京から真知子もやって来て、通夜振る舞いの支度を手伝うことに。夜、思いがけなく大勢集まった弔問客は、チエに作り方を習ったそれぞれの味噌を祭壇に供える。葬儀のあと、真知子を栗の渋皮煮で労ったツトムは、「ここに住まないか」と持ち掛ける。「ちょっと考えさせて」と応じた真知子だが、しばらくしてふたりの心境に変化を生じさせる出来事が起こる……。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2023年2月下旬 キネマ旬報ベスト・テン発表特別号

日本映画ベスト・テン:

読者選出日本映画ベスト・テン:

2022年12月上旬特別号

REVIEW 日本映画&外国映画:「土を喰らう十二ヵ月」

2022年11月下旬号

「土を喰らう十二ヵ月」:インタビュー 中江裕司[監督]

「土を喰らう十二ヵ月」:作品評

「土を喰らう十二ヵ月」:エッセイ

UPCOMING 新作紹介:「土を喰らう十二ヵ月」

2025/12/15

2025/12/15

95点

レンタル/東京都/TSUTAYA 


大自然の中の人間とは…

この映画を観ると「こんな大自然の中で、土から獲りたての美味しそうな野菜などを食して生活してみたい」と思う。
映画に映される食事が本当に美味しそうで、ひとつひとつ丁寧に扱った食材を大切に食事にしていく姿だけでも絵になる素晴らしさ。

舞台は信州。
13年前、妻に先立たれたツトム(沢田研二)は、大自然が作り上げた野菜(筍・梅・茄子・白菜・山椒など)を大切に調理していく。個人的には、窯で炊いたお米、茹でた筍は一度食してみたいものだと思った(^^)
ツトムは貧しい家に生まれたため口減らしで少年時代を寺で生活し、老年になった現在は犬と暮らしながら、季節の移ろいと季節の食事について原稿を書いている作家になっている。
そこに担当編集者の真知子(松たか子)が東京方面からツトムの原稿を取りに来る。真知子が「本のタイトルだけでも教えてよ」と言うと、ツトムは原稿用紙に「土を喰らう十二ヵ月」と書く。
ツトムに本当ピッタリのタイトル!

また、亡き妻=八重子の母親チエ(奈良岡朋子)も、少し離れた所で、畑を耕しながら一人暮らしをしている。ツトムは時々チエの様子を見に行き、チエの作ったたくあん・味噌汁などでもてなされる。
奈良岡朋子もつっけんどんな雰囲気はあるが、優しさも感じる上手さを見せる。

そして、ツトムは「死にたくない」と思っていたのだが、ある出来事から「死を常に意識しながら生きる」ことになる。
この流れが実に上手く、ツトムは毎日寝る時に「じゃあ死にます…」と言って寝るのだが、次の日には普段の生活をしているツトムの姿を見ると、「毎日毎日、その日を大切に生きることを忘れてはならない」という中江裕司監督が表現しようとしたことが顕著にあらわれたシークエンスではないか……と思う。

大自然の中の人間とは……、これまで忘れていた風景を見せてくれる素晴らしい映画だった。傑作!

2022年キネマ旬報第6位。

<映倫No.123367>

2025/11/30

2025/12/01

70点

レンタル 


年の差カップル

まず、ツトム(沢田研二)と真知子(松たか子)の関係性が、分からなかった。かなり親しそうであるが、親子でもなさそう。作家と編集者ではあるようだが、親密である。年の差カップルであるにしても、かなりの開きだ。沢田と松は実年齢でも30歳位開きがあるが、映画内ではいくつの差なのだろうか。それで設定としては、二人は恋人となっていた。しかし、ツトムの前妻の遺骨が、まだ埋葬されずに家に残されている。これは未練なのか。それなのに新しい恋人がいるというのが、私には理解できなかった。

原案は水上勉のエッセイ。だから主人公の名前がツトムなのか。ツトムは真知子を精進料理でもてなす。料理研究家の土井善晴が監修したという、シンプルな料理の数々がとてもおいしそうだ。地元で獲れる旬の食材。二十四節季を取り入れて語られる、一年の自然のそれぞれの美しさ。人の暮らしの原点がここにある。

淡々と描かれているため、実はウトウトしてしまった。映画を観ながらこういう状態になるのは、私としては滅多にない。だから何か見落としているかもしれないことは、打ち明けておきたい。DVDなので、また観ることもできるが、すぐにはその気になれないので、今回はこれで、筆を置きたい。

2022年キネマ旬報ベストテン第6位、同読者選出第9位。

2025/06/06

2025/06/07

60点

VOD/U-NEXT 


ジュリー

ネタバレ

「ナビィの恋」の中江裕司監督作品。あの映画の主人公は都会生活に疲れた女性で西田尚美さんが演じていた。その西田さんがいやーな感じの役(主人公の亡くなった奥さんの弟の奥さん)を演じていてよかった。ドラマには必ず抑揚が必要だ。

食と自然環境を存分に美しく描くこのドラマは、抑揚のないドラマになりがちな展開を逆手に、うまく人物の思いを行き来させてやきもきさせる。うまい演出だと思う。沢田研二さん演じる主人公(ツトム)と分筆家である彼を支える編集者(松たか子さん演じる真知子)の物語は、平凡でありながら大きく揺れ動く。

盛大な葬式や主人公が病気になって入院したりする動きを動物たちと自然が泰然自若として見守る。主人公が入院中に映される愛犬のサンショ。この犬のシルエットや、食事するテーブルに大きく掲げられた絵画のような大きな窓がいかにも映画的だ。

散々真知子に「一緒に住もう」と誘っておいて、主人公の入院を心配して一緒に住むことを決意した真知子に無反応の主人公。このときの松たか子さんのなんとも言えない表情。相手から反応がないことに傷つく女性の心理をうまく表現していた。

何よりジュリーが、「太陽を盗んだ男」や「ときめきに死す」などで存在感を示したあの頃とはまるで違う存在として自然に溶け込もうとする姿勢に胸がきしむ。

2025/05/06

2025/05/07

-点

その他/飛行機 


ジュリーの体型が説得力がないかな?

一年を通して季節の移ろいを映像化してるのは価値があるがしかし、ジュリーの恰幅がいいのはあんなに肉とかとってないのにも関わらず???……説得力にかけるんだよなぁと。松たか子も「自然のものおいしー」とか言う要員にしかなってないじゃん。逆に「自然の恵みだから苦いけど美味しいね」ならまだしも。
ジュリーと松たか子の関係性にも、ん??てなる
私のみた限りでは主役は山椒と名付けられたワンコがめっちゃいい。
ジュリーの言葉で「生きる事は体を動かすこと」だけが心に響く

2024/09/22

2025/01/07

70点

レンタル 


質朴豊かな料理

ネタバレ

焼いた小芋、湯でた筍、漬けたナスなど、旬の食材を使った質朴豊かな料理の数々に食欲を刺激される。山村の澄んだ空気感を湛えた四季折々の風景描写も良いし、主人の帰りをジッと待つ愛犬さんしょも可愛かった。ただ、高名な小説家である主人公のあまりにも達観した死生観と、経済的にも時間的にも余裕がなければ到底無理であろう浮世離れした生活ぶりにイマイチ感情移入出来ず。沢田研二、松たか子はじめ、俳優陣は皆好演だった。

2024/11/26

90点

VOD/U-NEXT 


土と共に生きて、死ぬ

ネタバレ

丁寧な暮らしはそれだけで画になるのだと感心させられた。
大きなドラマが展開するわけではないのだが、セリやほうれん草の根についた泥が丁寧に落とされていく様や、小芋が囲炉裏で炙られる様がとても感動的で、最後まで画面に引き込まれた。
精進料理の数々がどれも本当に美味しそうで、個人的にはシンプルに茹でた柔らかそうな筍が一番食べてみたいと思った。
また啓蟄から始まり、二十四節気ごとのそれぞれの山の景色が堪能できる作品でもあった。

舞台は信州の山奥。
13年前に妻に先立たれた作家のツトムは、かつて禅寺で身につけた精進料理を作りながら、一人で慎ましい暮らしを送っていた。
時折東京から訪ねてくる真知子との恋人とも呼べない微妙な関係が面白い。
割と遠慮なく真知子に色々と手伝わせようとするツトムの姿が図々しくもあるのだが、おそらく彼に頼られることは真知子にとっても嬉しいことなのだろう。

真知子がいない時のツトムの日常はとても質素だ。
山菜を採りに出かけたり、畑を耕したり、家の拭き掃除をしたり。
身体を動かして、腹が減ったら山の恵みをいただく。

時折、彼は同じく一人で暮らす亡くなった妻の母チエのもとを訪れる。
どうやらチエは気難しい性格のようだ。
ツトムは亡くなった妻の遺骨をいつまでも家に置き続けていることをチエに咎められる。
ツトムは頭を下げて謝るものの、おそらく遺骨を墓に入れる意志はない。
いまひとつ真知子との関係を発展させられないのも、ツトムの心に妻の死がまだ大きな傷を残しているからなのだろう。

物語はチエの唐突な死で動き出す。
無責任なチエの息子夫婦は、葬式の一切をツトムに任せっきりにしてしまう。
ただ弔問客をもてなすために、ツトムが丹精込めて作る精進料理は本当に美味しそうだった。
もちろん真知子も手伝わされる。
結果的にツトムはチエの遺骨まで押し付けられてしまう。

やがて自分の死について考え出すツトム。
そんな折に彼は心筋梗塞で倒れてしまう。
真知子の発見によって一命を取り留めたツトム。
彼は救急車の中で「死にたくない」と繰り返していたらしい。

真知子は色々と考えて、ツトムと一緒に暮らすことを申し出る。
ここから真知子との仲が急接近するかと思えば、あっさりツトムは真知子の申し出を断る。
自分は一人で生きるのが合っているのだと。
こうして二人の関係は終わりを告げてしまう。

あれほど死にたくないと思っていたツトムが、死の準備をしながら生きることを決めるのも不思議なものだ。

人はどうしても先のことを考えてしまうが、それは視野を拡げているようで、実は狭めていることなのだ。
どれだけ先の心配をしても、その時が来なければ何も分からないのだから。
明日、明後日のことを考えるから、生きるのが億劫になる。
大切なことは、今日一日を精一杯生きることだ。

最後の瞬間まで清々しい作品で、都会で暮らしていると、色々なことを端折りながら生きているのだと改めて考えさせられた。