シリアのアサド政権が崩壊したのが2024年11月、この映画の制作が2017年なので、2016年頃の時代だろう。ウェキ先生に教えてもらうと、アサドの強権政治が始まってきたのが2007年頃からで、さらにアラブの春(個人的にはアラブの春は中東の政情を不安定にさせただけだと思っているのだが)から反体制派と政府側の対立が激化していって、ロシアのてこ入れによる反対派への虐殺が激しくなっていった。シリア国内での戦闘は十数年も続いていたわけだ。
先月観た「娘は戦場で生まれた」が、シリアのアレッポがロシア軍の攻撃により陥落するまでを描いたドキュメンタリーだったが、これもしんどい映画だった。
大体、シリアがこんな危険な状況で経済が成り立っている、というのが不思議だ。だって一歩外に出れば、いつ撃たれるかも判らない危険な状況でどうやって働くことが出来るのだろう。農産物が収穫されてもそれを流通、販売することが出来ないじゃない。また、輸出入も出来ないだろう。それともアサド政権の息のかかった連中だけが商売できて暮らしていったのだろうか。
この映画は舞台が高級なマンションの一軒だろうか、そこに家族4人、使用人1人、同じアパートから逃げてきて世話になっている若夫婦と赤ちゃんの3人、そして知り合いの男の子であろうか1名の合計9名。ほとんどが家の中が舞台で、カメラが外に出るのは数シーンあるだけだ。舞台劇だったとしてもおかしくない。ただ、部屋の間取りが多いのでそこは大変かな。外は危険で、若い夫婦の夫が外に出た途端に狙撃手に撃たれて倒れてしまう。こんなところに住むの絶対いやだよ。
アパートに住む住民はほとんどいなくて、水道は止まっている。電気は来ているようだ。ドアは鍵だけでなく、でかい木の閂を2段している。そのくらい外部からの侵入に警戒している。そんな中でなんとか生活している中、秘密警察なのかただの強盗なのか、男2人がやってくる。
こんな状況の中で生活なんか出来ないよ。とっとと逃げ出した方がいい。でもどこに逃げればいいの?
この映画の制作はベルギー、フランス、レバノンとなっていて、おそらくシリア難民の人たちからシリアの状況を聞いて作っていったのだろう。非常にシビアな映画だった。こんな状況下であと8年も生き残っていかなければいけなかったシリアの人達の苦悩は、到底アジアの外れに住んでいる私には想像も出来ない。そんな人達に対して外国人排斥を唱える連中は、今のガサやウクライナで暮らしてみたらいい。私たちが出来ることといったらそんな彼らを微力ながら支えることではないか。クルドの人達も国を持たない最大の民族で、昔から常にその国の中央政権から迫害を受け続けている人達なのだ。そしてISやシリアのアサド政権と一番勇敢に戦った人達ということを知るべきだ。日本で悪いことをしているクルド人っている?お隣のお隣の国の人達と比べると、ほとんど犯罪なんかしていないよ。どこかの馬鹿があおって差別しているんでしょ。そんなクズどもにならないように。