“OP+フェス”2019年11本目「セックスの季節」は、今フェスで先頃「悦楽クリニック」が上映された佐々木浩久のもう1本の監督作ですが、徹底したドタバタコメディだった「悦楽~」とは対照的に、ラストにゴダール「気狂いピエロ」の名台詞“見えた”“何が?”“永遠が。太陽が溶け込む海が”が出てくるメタ映画です。
この映画は、女優志願という設定のヒロイン栄川乃亜が、同性愛の写真家やら、芸能事務所のマネージャーやら、同じ事務所の所属女優で某TV局プロデューサーをターゲットにした枕営業要員の女やら、腹上死したプロデューサーの死体処理係やら、若手映画監督やらといった人々を渡り歩く映画ですが、余りにも頭でっかちで観念的に過ぎました。
同じようにゴダール「気狂いピエロ」の名台詞を引用したピンク映画として、わたくしたちは池島ゆたか「next」を知っていますが、池島の偉いところはあくまでも全篇をエンタテインメントに徹していたことなのであり、自己満足にしか思えなかった今作の佐々木浩久と比較しては、逆に佐々木が可哀想かも知れません。
佐々木の自己満足ぶりは、上映された夜の舞台挨拶にも表れており、彼自身には大事な思い出なのかも知れないものの、観客の大多数にとってはどうでも良いおっさんの怪談蘊蓄を許してしまうのは如何なものかと思いましたし、そんな蘊蓄に付き合わされた女優さんが可哀想でした。