「アグリッピーナ」は1709年に初演された、紀元50年のローマ帝国を舞台にする、若干24歳のヘンデルの傑作オペラ。
本公演は現代に舞台を変えたMET初演の新演出。
物語は連れ子を皇帝にしようと画策するアグリッピーナとその謀略に巻き込まれた美人のポッペアの恋愛喜劇だが、ポッペアが基本的に主人公のようだ。
現代劇に焼き直したお陰で、喜劇要素がたっぷり織り込まれている。
アグリッピーナが家臣ナルチーゾの股間を触って勃起させたり、皇帝にネクタイで股を擦らせたり、ゴルフをしたり、スマホ自撮りさせたり。
幾度もMET観客の笑い声が会場から聞こえて来た。
アグリッピーナ役のジョイス・ディドナートのコロラトゥーラや老練な演技も良いが、ポッペアを演じた今回METデビューのブレンダ・レイが熱唱熱演。
第一幕最後のカウンターテナーのイェスティン・デイヴィースのアリアは感動的。
また、連れ子役のケイト・リンジーが現代若者のしなやかな身のこなし、後の暴君ネロを連想させる不良ぶりを発揮していて、会場からも最も声援を受けていて印象に残った。
ただ、ワーグナーなら最初から構えるが、ヘンデルで上映時間3時間55分は長過ぎる。