一体この映画のどこに心を掴まれたのか分からない。
ケンジのキャラクターとか独特の会話の間とか下手ウマ風でとんでもない表現力を持ったアニメーションとか、確かに全て魅力的だ。魅力的なのだが、これらの魅力が伝わる頃には既に作品に引き込まれていた。
おそらくそれは作者の「自信」かなという気がする。作者が自信満々に作った作品を「面白いでしょ?」と見せて来たら「面白い」と思ってしまうのだ。だから森田くんも古武術の演奏に心を打たれるのである。それがこの作品のテーマかなと個人的には思った。
こういう脚本は本当にすごいと思う。脚本と監督が一緒だから成立する表現で、こんな何も無い脚本を脚本家が書いたら普通不安で不安で仕方がなくなる。監督が脚本を書く事で、既に作品のイメージが頭の中にあるからこそ、この脚本を良しとして押し通す事ができるのである。それはごくごく少数で作る自主制作映画だからこそ実現できた企画とも言える。
そう考えるとラスト、ケンジがリコーダーの超絶テクを身につけた理由も納得できる。正直あのシーンは「知識とかテクニックとか関係無くてずっと楽器をジャカジャカしてるだけで音楽になるよね」というメッセージからやや遠ざかるかなという気がしていたのだが、そうではなかった。
自信満々に演奏するシーンを見せられて私は笑ってしまった。
面白いと思ってしまった。
脈絡とかメッセージとか関係無く、自信満々に作り手が書いた自信満々に動くキャラクターは人の心を打つのである。やはりこの作品のテーマは自信なのだ
※以下雑記
・不良とインキャが共通の趣味によって心を通じ合わせるのは鉄板的に面白い
・あやちゃんが可愛い。変な髪型なのに可愛いってすごい。
・あやちゃんはどうして舞台に立たなかったんだろう。
・ゲーセンの風景が懐かしい。ああいうゲーセンにはカップラーメンを自動で作ってくれる自販機とか銀紙にくるまったトーストが出てくる自販機とかあるねん。