サタンタンゴ

さたんたんご|SÁTÁNTANGÓ|SATAN'S TANGO

サタンタンゴ

amazon
レビューの数

33

平均評点

81.8(84人)

観たひと

114

観たいひと

58

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 ハンガリー=ドイツ=スイス
製作年 1994
公開年月日 2019/9/13
上映時間 438分
製作会社
配給 ビターズ・エンド
レイティング
カラー モノクロ/ビスタ
アスペクト比 ヨーロピアン・ビスタ(1:1.66)
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

「ニーチェの馬」のタル・ベーラ監督による7時間18分の大作が、製作から25年を経て初の劇場公開。ハンガリーのある村。降り続く雨と泥に覆われ、活気のないこの村に死んだはずの男イリミアーシュが帰ってくる。村人たちは、そんな彼の帰還に惑わされてゆく。タンゴのステップ<6歩前に、6歩後へ>に呼応した12章が、全編約150カットという驚異的な長回しで詩的かつ鮮烈に描かれる。脚本は、原作者であるクラスナホルカイ・ラースローとタル・ベーラ。35ミリフィルムにこだわり続けてきたタル・ベーラが初めて許可した4Kデジタル・レストア版での上映。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

経済的に行き詰まり、終末的な様相を纏っているハンガリーのある田舎町。シュミットは、クラーネルと組んで村人たちの貯金を持ち逃げする計画を女房に話して聞かせる。盗み聞きしていたフタキは、自分も話に乗ることを思いつくが、その時、家のドアを叩く音が。やって来た女は「1年半前に死んだはずのイリミアーシュが帰って来た」と信じがたいことを言う。イリミアーシュが帰って来ると聞いた村人たちは、酒場で議論を始めるが、いつの間にか酒宴となり、夜は更けていく……。その翌日、イリミアーシュ(ヴィーグ・ミハーイ)が村に帰って来る。そんな彼の帰還に惑わされる村人たち。果たしてイリミアーシュは救世主なのか、それとも……。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2019年12月下旬号

読者の映画評:「サタンタンゴ」岩永芳人/「トールキン 旅のはじまり」松本ひろみ/「ジョーカー」越村裕司

2019年11月上旬号

読者の映画評:「サタンタンゴ」布やハサミ/「ガーンジー島の読書会の秘密」松本ひろみ/「初恋ロスタイム」保坂朱美

2019年9月下旬特別号

「サタンタンゴ」:作品評

「サタンタンゴ」:解説

UPCOMING 新作紹介:「サタンタンゴ 4Kデジタル・レストア版」

2022/03/08

2022/03/08

64点

選択しない 
字幕


ポンポさん卒倒

社会主義、資本主義、そしてキリスト教批判が根底にありますが、描かれているのはシンプルに世界と人間の貧しさです。
それは愛の不能と狂気であり、非情の中に宿る生や実存の真摯さでした。
死は生の対極ではなく、その一部として存在しており、本作には眩しい善人も唾棄すべき悪人も居ません。
皆が悪事を働き、施しを与える。
その加減が絶妙で、在り方に嫌悪を抱き切れません。
やがて時間の概念が芸術へ昇華していくにつれ、この割り切れない世界や人に深く安心している自分が居ました。
しかし、もう一度鑑賞する根性は無いので、私は「サタンタンゴを2回に分けて観た」という十字架を背負って生きていきます。

2022/02/11

2022/02/12

-点

映画館/東京都/シアター・イメージフォーラム 
字幕


映画体験の極限

ネタバレ

世の中にある映画の極限を映画館で体現する、という映画としての在り方を頂点まで押し上げる世界屈指の作品といえる。ハンガリーという国のことすら知らない日本人がタル・ベーラの作品をこよなく愛する理由は、小津安二郎作品のような厳格に拘束された状態からの開放だと思う。映画の内容は一定の予備知識がないとまるで理解できない。それでも劇場を満席にした観客とここに7時間以上時をともにした生涯忘れがたき体験は永遠だ。

(略)

前日に『ダムネーション/天罰』を鑑賞して、この日体験した『サタンタンゴ』は、一定の連続性がある。まるで脈絡のないドラマのようだが『ダムネーション/天罰』よりは物語性がある。自らの知識では計り知れないので、プログラムに記載された深谷志寿氏(東海大学准教授)らの解説によれば、この物語は12章だてて、前半の6章が順行で後半の6章が逆行してゆく輪環構造になっているようだ。従って前半で図体の大きい医師(ドクター)がアルコールが切れて出かけるシーンとラストシーンは重なる。映画は医師が窓に板を釘付けして真っ暗になるが、このあとまた同じ話しが繰り返されるということのようだ。これはタイトルのタンゴの意味も重ねていて、タンゴとは6歩進んで6歩下がるダンスで、これらの章立てはまさにタンゴ。輪環構造のタンゴらしい。

そしてもうひとつ重要なのは、ここの農民がなぜ大金を持っていたのか?という疑問だが、これはハンガリーの社会主義政策末期に国策である農場を解散するのに1年分の給料を受け取ったあとという設定だかららしい。ハンガリーはソビエト連邦の軍事介入を受け入れ、社会主義時代が長く、タル・ベーラ自身も国家事情で映画を作ることができないので、社会主義政権下の大学を卒業してこれらの作品を作ったということだ。

ソビエトというとアンドレイ・タルコフスキーを連想する方も多いと思うが、同じ共産圏で弾圧された社会で生み出される映画には共通性がある。タルコフスキーの初期作品の切れ味とワンカットでつなぐ手法はまさにタルコフスキーのメソッドだろう。

話しをもどすと、農民が受け取った1年分の給料を集めて、死んだはずのイリミアーシュが彼らを連れてゆくのは、単に農民に職業を斡旋するのではなく、彼らを国家のスパイとして潜伏させるためなのだそうだ。イリミアーシュと相棒のペトリナは労働忌避者で、当時の社会主義政権では警察に逮捕されてしまう。逮捕された二人は警察の提案で農民をスパイとして潜伏させるアイデアを受け入れたのだ。後半で警官が報告書を作成しているのはこうした流れに沿っている。

このように整理すると話しはわかりやすいが、映画は全く説明を回避し、映像をただただ見せることに徹している。そして貧しい農村の狂気を重ねる。アル中や虐待など、社会主義だろうが資本主義だろうがどこにでも生じるであろう人間の根底に潜む悪(サタン)の面を露悪的に示す。この映画が企画された頃のハンガリーは必ずしも貧しい状況ではなかった。従ってこの映画はハンガリーの実態をしめすというような程度の映画ではない。人の中に棲むサタンがタンゴのように輪環することを立証した映画なのだ。こうした普遍性に気づいた世界の多くの映画関係者がタル・ベーラを評価したのはこの部分なのだ。

とにかくその映像と耳に残る音のすごさは忘れがたき体験だ。『ニーチェの馬』でも自然の猛威を示す風の音などが強烈なインパクトを与えるが、この映画も随所に音の演出が施されている。牛や馬の息吹や歩く音。強風が人物を追い立てるシーン。2度ほど出てくるこの演出はカメラと巨大な扇風機が俳優を背後から追い立てているのだろうか。

医師がアルコールを切らせて倒れるシーンや、この映画で最も衝撃的な少女と猫のシーンなどは、映画史上類を見ない傑出したシーンだ。誰も真似できない優れたシーン。そしてハンガリーの大地の中央に道を配して、その道を画面の向こうに向かって歩かせる演出。延々と地平線に向かって歩くシーンをそのまま写し続ける。最後に医師が唯一向こうから手前に歩いてくる。これらの修行のようなシーンはこの映画の軸だ。観客はとてつもなく長い長いこうしたシーンと対峙させられる。7時間以上に及ぶこうしたシーンを延々と突きつけらた観客は最後に真っ暗な劇場で静かに終焉を迎える。これはまさに生と死。そしてまた新たに生まれる光を待ち焦がれまるで自分が胎児になったかのような気持ちにさせられる。劇場の照明が照らされて生と開放を感じるのだ。

これは単なる映画ではない映画体験の極限といえる。映画が人々に示す在り方の極限。人々の中に内在するサタンを露出させそれを封じ込める。そして見終えたあと外に出てこの映画体験を反芻する。そしてそれはきっと2度と体験することのできない体験だったことを認識する瞬間でもある。

  

2021/07/28

2021/07/28

70点

VOD/Amazonプライム・ビデオ/レンタル/テレビ 


映像に没入する。

やっと観終えた。というのが正直な感想。物語を追うというよりも、その都度都度の映像に没入する印象が強かった。どんづまりの村を救おうとするイルミアーシュは、実は村人を搾取する存在だった。そのどんづまり感、果てのない絶望感が、あの長回しの映像からにじみ出ているよう。

2021/02/12

2021/02/15

80点

VOD/U-NEXT 
字幕


「救世主がやって来る。悪魔のささやきが聞こえる。」

ずっと観たかった作品。
やっと観れた。
7時間18分という超長尺。
ぶっちゃけ2時間で作れそうな内容だけどそれじゃ意味がない。
この内容に438分かけたからこそ意味がある。

まぁ二度と観ないだろうけど一度観とけばネタになる作品。
尾を引く余韻。

2020/12/13

2020/12/13

90点

VOD/TSUTAYA TV/レンタル/テレビ 
字幕


あーよくがんばった、私

ネタバレ

<ネタバレあり>

タル・ベーラ監督の映画は、ソファでポテチ食べながら見るものじゃないことはわかってるけど、映画館で7時間見続けたら消耗しすぎて無理なのでソフト化を待ってました。折しも、東京都のコロナ新規感染者がまた最高値を更新した今日、引きこもってVODで見ることにします。(TSUTAYAはすごく画質が悪いし早送りもできないけど、Amazonプライムの1650円よりだいぶ安い550円なのでこっちでレンタル)

長い映画を見るときいつも書いてますが、7時間って1時間ドラマ7回分を通しで見るだけのことなんですよね。「クイーンズ・ギャンビット」をぶっ通しで見るようなもの。「サタンタンゴ」は象徴的で暗喩的な作品かと思っていたけど、実は明確なストーリーがあるんですね。映画を見て、たくさんググって、特に深谷志寿という方の「サタンタンゴの世界」という文章に触れたものを読んだらわかってきました。孫引きになってしまって恐縮ですが、この方はこう書かれたそうです。「労働忌避の罪でイルミアーシュたちは逮捕されたけれど、警察のスパイ網を組織することを交換条件にイルミアーシュたちを解放。彼らは農民たちに真実を伝えることなく言葉巧みに金を巻き上げて、警察のスパイとしてあちこちに送り込んだ」警察に呼び出される第2幕を見直してみても、「これから私に仕えるか」という一言くらいしか、任務を与えたことを示唆する場面がなくて、そこまで深読みするのは困難です。でもそう考えるとつじつまが合う。幻想的な物語だと思い込んで見ていると、そういう世俗的・犯罪的なできごとに目が行き届きません。

冒頭の、気が付いたらみんな同じ場所に集まっていた牛。お金を埋めるとお金の木になると騙された少女。荘園を夢見て有り金全部イルミアーシュに供出してしまう村人たち。ぜんぶ相似で、繰り返し繰り返し操られる人間を描いていますね。

おおむね現実的な映画だと思いつつも、やっぱり超自然的な表現が散見されます。少女が居酒屋に現れるのは、亡くなった前なのか後なのか。最終章で酔っぱらいの医者が、見てきたかのように、”荘園”へ行ってひとり逆らったフタキのその後を書き綴る不自然。まるで全ては彼が書いた物語である、というみたいに。少女は、林の中に横たわるときに「天国の父や母」のことを思ってるけど、その後母親が彼女を探してる場面があったりする。

ハンガリーの人民が次々に移り変わる国家体制に翻弄され貧しさを強いられることを寓話的に映画化した、というのが骨なんだろうけど、反旗を翻すことができたフタキより、ただ酔っぱらっていたように見えてフタキを含む物語を語り続ける医者が中心にいて、ハンガリーを語る「百年の孤独」みたいな物語だと、捉えてみたい気がします。

タル・ベーラは、ミヒャエル・ハネケのような非情なドラマをタルコフスキーのように完璧な映像で表現する監督だ、と思うけど、ギレルモ・デル・トロのような南米的マジックリアリズムと対極にあるわけではなくて、最後はやっぱり寓話的に収めるんだな。というのが私の印象でした。

この映画は一度映画館で見るだけでは把握するのが難しいはず。もやもやが残っている方は、ぜひVODでもう一度、倍速でもいいから見てみるといいんじゃないかなと思います。

2019/09/27

2020/04/21

90点

映画館/東京都/シアター・イメージフォーラム 
字幕


救世主がやって来る。 悪魔のささやきが聞こえる。

1989年ハンガリーのある村
社会主義国家ハンガリー解体寸前

降り続く雨のなか、ぬかるんだ道を目的地まで、果てしなく歩き続ける。

絶望することさえ忘れてしまった人々の、永遠に覚めない悪夢のような物語—。

殺伐とした風景に阻害された人々。
普遍的な阻害された世界。

タンゴのステップ(6歩前に、6歩後へ)
〈永幼回帰〉ニーチェ