『ビリーブ 未来への大逆転』On the Basis of Sex(性別による差別)2018
この邦題をつけた人は
『ドリーム 私たちのアポロ計画』Hidden Figures(隠された数字・人物)
『未来を花束にして』Suffragette(サフラジェット)と同じ担当者ではないか。男女平等を求める女性映画にはフワッとした優しげな邦題を付けた方がいいと判断したのだろう。よくよく女性を馬鹿にしている。閑話休題(ソレハサテオキ)
フロイント教授「裁定はその日の天気には左右されないが、時代の空気に左右される」
グリーン弁護士「女性、母親、ユダヤ系。よく面接にこぎつけたね。君は大変優秀だ。だが女房連中が嫉妬するから雇えない」
「『100年前に負けたって今負けるとは限らない』誰の言葉か知ってる?アティカス・フィンチだよ」
アティカス・フィンチは『アラバマ物語』の主人公。黒人差別と戦った弁護士。アメリカ映画ヒーローの歴代1位。演じたのはグレゴリー・ペック。
2020年に亡くなったアメリカ合衆国最高裁判事ルース・ベイダー・ギンズバーグの伝記映画。男女平等のために戦い続けた女性法律家。
ルースと夫マーティは所得税控除の裁判で政府を訴える。母の介護のために看護婦を雇ったがその費用の所得税控除が認められなかった。何故なら被告が独身男性だったから。控除が認められるのは女性だけとされていたからだ。介護は女性の仕事とされていたから。
政府を訴えたルース達を叩き潰すため政府側は一丸となって対抗策を練る。
「判事たちに未来のアメリカを想像させてやれ。判決を間違えれば子供が家に帰っても家に誰もいない。母親が働いているからだ」
「女に男と同じ仕事ができるものか。男の稼ぎがないと家族を養えん」
「給料が下がり離婚が増え社会基盤が崩れるでしょう」
「アメリカの家族の危機だと判事たちによく分からせろ」
政府側の役人や教授の言い分は統一協会の教義と驚くほど似ている。「男は労働、女は家庭」という家庭観を共有して統一協会がアメリカにも広がったのがうなずける。
ルース「急激な社会変革?私がハーバード・ロー・スクールに入学した時女性用トイレが無かった。100年前だったら私はこの法廷に立つことすらできなかった。たくさんの負の遺産をつみかさねて今がある。国に誤りを正す自由を認めてほしい。時代が変われば法律も変わるべきなのです」
行き詰まる裁判場面、力強いルースの言葉が法廷に響く。胸を打つ名場面だ。
ギンズバーグはたくさんの裁判を通して男女差別を撤廃して行った。そして素晴らしいのは1930年代(昭和一桁)生まれなのに夫マーティが男女平等を実行していた人物であること。料理をして育児をしてルースの才能を信じて支える。
全国の高校生に授業の一環として見せたいくらいだ。家庭連合の講演よりずっと有益。
そしてラストのご本人登場が最高だった。
追記
ルースとマーティ二人が仕事を十分に成し得たのは映画では全く登場しない人物のおかげだろう。それはベビーシッター。日本ではあまり普及しておらず仕事を持つ母親は保育園に入れなくて苦労をしている。ベビーシッターが全く登場しないところがかえって不自然だった。ここがこの作品のキズ。かな。