人類未踏の月面着陸をテーマにした作品です。この快挙を映像化してくれたことにより、我々のような一般人でも月面を擬似体験させてくれたので楽しませてもらえたのではないでしょうか?
一方、本作はアポロ11号のパイロットである主人公ニール・アームストロング(ライアン・ゴズリング)の半生を描いた人間ドラマでもあります。誰も行ったことがない月面に行くのには当然ながらリスクを背負うことになります。妻はニールの身を心配するあまりに感情的になり夫婦間で衝突があったり、共に月面を目指した仲間がロケットの事故で亡くなったりと、命懸けで月面着陸を目指す姿を丁寧に細かく描写してます。
そして当時の世論が、宇宙開発で多額の税金投じてる政府に不満を持っていたこと。ソ連との宇宙開発競争で遅れをとっていたことも紹介されてました。国の威信を賭けたアポロ計画だったことが分かります。
テストパイロットとしての大気圏近くまでの飛行や、宇宙船同士のドッキングテスト、月面への着陸訓練は映像を通して、そのハードさが伝わってきました。それをパイロット目線で見せつけられるものですから、乗り物酔いのようになり気持ち悪くなることも度々ありました。
宇宙パイロットの過酷さをデイミアン・チャゼル監督は伝えたかったのだと思います。
IMAXで観たら、宇宙のシークエンスなんかもっと臨場感があって気持ち悪くなった気がします。
宇宙のシーンは凄味はあったが、本作の本質はニールが月面着陸するまでの苦悩と試練を描写したことにあります。
トム・ハンクス主演の「アポロ13」は危機からの生還劇が前面に出ていて、娯楽性も十分でした。本作のテイストは淡々としたもので、ニールの内面をフォーカスしてます。伝記映画であり、娯楽映画からは一線を引いてるとは思います。
ラスト近くで、月面着陸を達成したことに喜びや誇りに満ちたニールの言動はなかった。
ただ、無事に地球に帰れたことに安堵しているように私には見えました。