60年代のデトロイトで暴動が起きた。人種差別撤廃を求める公民権運動が実りつつあった時期だが、各州で黒人のデモや暴動の度に、警察や州兵が出動して死者や怪我人が続出したことはニュースの映像にも残っている。
その中で起きた「アルジェ・モーテル事件」を本作は取り上げている。
黒人がふざけて撃ったおもちゃの銃の空砲を警察と州兵が狙撃とみなしてモーテルに押し寄せてきた。撃った者が誰なのか、警官の拷問に近い尋問が始まるのであった。
痛めつけられる黒人たち。警官が振るう暴力には目を疑った観客も多かったであろう。
特にウィル・ポールター扮した警官の尋問は凄まじく、あらゆる強行手段を駆使するのである。黒人グループを壁際に並べて、無抵抗なのに暴行を繰り返す。犯人を取り調べるというレベルではない。
明らかな自白の強要である。死者も出た。
この惨劇のシークエンスは当事者たちの証言を元に再現したとある。どこまでが真実かは定かではない。実際には警官たちが生命の危険を感じてやむを得ない行動だったかもしれない。逆に映像が真実そのものだったかもしれない。
人種差別問題は根深い。白人は黒人に対して、黒人は白人に対して、疑心暗鬼になってるからだ。暴力が新たな暴力を生む。負のスパイラルである。しかしそれぞれに正義を持っている。それが厄介なのだ。
黒人の方が人種ごとの人口比率で、マイノリティになってしまう。だから多数派の白人の意見が通ってしまうだけの話です。
アジア系や南米のスパニッシュ系も差別を受ける。白人の中でもユダヤ系やイタリア系も下に見られてる。だからアメリカは病んでる国と言われてるのです。
それを本作で、映像化して具現化にしたに過ぎないと私は思ってます。
現代は人種差別の問題はかなり解消されてきてるみたいですが、喧嘩好きな国民性は変わらないであろう。アメリカ人には自分が存在するカテゴリーが絶対であるからです。
アルジ・スミスが扮した黒人バンドのヴォーカルラリーは、白人には自分の歌を聞かせない道を選んだ。白人お断りの人生を選んだのだ。そこに「アルジェ・モーテル事件」の真実を指すものがあると思います。
それにしてもアルジ・スミスの表情が良かった。ハリウッドに若きスターの誕生を私は感じました。これからの活躍に期待したいものです。
キャスリン・ビグロー監督も社会派のスゴイ作品をもっと期待してます。本作はアカデミー賞級の作品だったと思いますよ。
人種差別というテーマが刺激が強すぎて、映画賞のノミネートが見送られたのでしょうが屈せずに新たな作品を出してほしいですね、