刑事の回想スタイルをとっているけれど、そこに被害者ジェイメイや犯人のブ男ティンの視点をも交差させて進行するのでいまいちわかりにくさがあった。
この手の猟奇殺人事件で焦点となるのは犯人が誰なのかということなのだけど、それは犯人自身が早々に自首してしまうので意外と簡単に片付いてしまう。
あとは地方から都会に出てきた薄倖の美少女の切なさと、犯人の不可解な内面のみに絞られる。ただどうにもサスペンス映画を見たという気にさせない作劇のまずさが気になった。
裁判シーンでの犯人による少女殺害の描写を異常なほど細かく再現するシーンなどいささか悪趣味で、確かに猟奇性は高まったけれどそこまでする犯人の心理に迫れていないもどかしさが残った。それに反して都会の孤独に耐えきれない美少女の行き詰まった心情はよく描かれていたと思う。

タイトルの通り猟奇殺人事件なので、動機があるどうであれ原因が何であったかを描こうがグロテスクが焼き付いてどうでもよくなってしまう。

丁寧に丁寧に16歳の少女が殺されてバラバラにされるまでを描いた映画。香港映画で九龍猟奇殺人事件というタイトル、ついつい思い出すのはかの人肉饅頭の映画だが、内容は全く違った（あたりまえ）。
年号を記載するという苦心の作戦を使っているが、過去と現在、殺された少女、捜査する刑事、殺した青年と場面場面が次々と入れ替わる小説のような構成のため頭に染み込むまで非常に苦心する。しかし映画も半分を超え世界観に慣れた瞬間、登場人物たちの思い、心情が心に静かに突き刺さる。
殺戮シーンは刺激的なものの、殺人事件の映画でサスペンスではなく、心情を中心に描き出すのは勇気のいること。見事に成し遂げた監督に拍手。そしていい映画をありがとうございます。

主役の二人に感情移入できませんでした。
“滅び”には“美しさ”がないといけないと思いますが、それが今作にはありません。どうしてバラバラにしないといけないんでしょう…せめていっしょに逝ってほしかったです。

　香港で実際に起きた殺人事件をもとにした作品だそうです。

　「八仙飯店之人肉饅頭」ぐらい陰惨な話なのにせつなく幻想的な雰囲気が漂うのは、撮影が「恋する惑星」のクリストファー・ドイルによるところが大きいのでしょう。

　モデルを夢見る可憐な１６歳の少女が、体を売るようになり、チャットで初めて知り合った男に殺さればらばらにされてしまうという事件が描かれています。

　モデルを夢見る１６歳の少女が殺されてばらばらにされてしまうという衝撃的な事件です。なぜ、彼女はそんなふうに殺されなければならなかったのか。なぜ、犯人はそんなふうに殺したのか。理由らしきものは一応語られますが、断定的なもの言いではありません。そこに混沌とした恐ろしさを感じてしまいます。

　目を覆いたくなるようなシーンもありますが、音楽の使い方や映像はちょっと惹かれるところもあり、つい魅入ってしまいました。、

　香港で実際にあったバラバラ殺人事件を元に描いたサスペンス映画だ。
　16歳の女子高生・ジェイメイが殺され、ティンという男が殺害し遺体を解体して捨てたと自首してくる。事件に納得がいかないチョン刑事は、事件を執拗に追い続けるが…。

　本土と香港という現代中国に潜む暗くて深い社会問題を孕んだ作品で、香港ではその年の映画賞を総なめにしたという。しかし、私たちに日本人が観ると、いまひとつ釈然としない。
　刑事役のアーロン・クォックは我々には唯一の顔なじみだが、本作が描きたいのはこの刑事のことなのか、事件そのものを描きたいのかがよくわからない。過去にどんどん遡っていく構成も、本作の場合効果的ではなく話をわかりにくくさせている。