オーピー映画のR15再編集版シリーズ、榊英雄監督の「コクウ」は、ヒロイン戸田真琴が空を見上げて慟哭すると、真っ黒な雨が降ってくるという場面が描かれるので、“コクウ”とは“虚空”の事だと思ったのですが、そうツイッター上で呟いたところ、“上野オークラの舞台挨拶で、コクウは黒い雨とも引っかけたと言っていた”というご指摘をいただきました。“黒い雨、黒=コク、雨=ウ”という訳です。
映画の中身は、自らの意志で己の肉体を汚してまでして、ケリをつけようとし、幸福を掴もうとしたヒロインが、皮肉な結末を蒙るというお話で、ヒロインの痛みが観る者にも痛さとして伝わる映画でした。
榊英雄の監督した映画を全部を観た訳ではないので、偉そうなことは言えないものの、例えば「トマトのしずく」みたいな真っ直ぐな親子愛を描く一方、「捨てがたき人々」「木屋町DARUMA」のようなスキャンダラスな題材もありますが、「捨てがたき」も「DARUMA」も中身は実直だという印象であり、監督もそういうストレートな人なのかと思っていました。今回の「コクウ」も、たとえ肉体を汚してもケリをつけるところはしっかりケリをつけ、その後は汚れを落としてクリーンになって、その手で幸福を掴み取るというヒロインの意志は真っ直ぐだと思うものの、そう簡単に問屋が卸してくれないという皮肉に、榊監督の捻りが効いていました。
主演女優の頑張りは、まずは賞賛に値するとは思います。