匂いの出る映画もあるようだが、基本的に映画は香りや味そのものを描けない。《舐める女》という題名のこの映画は《嗅ぐ女》として始まる。
アヴァン・タイトルでウブなメガネ女と几帳面メガネ男のノリの悪い初デート。男の汗を拭いたハンカチの匂いを嗅いで恍惚とする女のアップでタイトル、次のシーンはその男と結婚してベッドの上で行為中の2人。この流れはすごくいいが、セックスシーンはエロくもなんともないつまらないもの。
夫の神経質な几帳面さが描かれ、妻の男の体臭、臭いに欲情するさまが描かれる。高校球児が干したシャツやマラソンオヤジの帽子を盗んで自宅マンションでその臭いを嗅いで悶えオナニーに耽る。オナニー後の大量のティッシュをトイレに流したため、トイレが詰まり修理人を呼ぶ。トイレの詰まりを直している最中に、修理人のタオルを取って風呂場で悶える妻、「奥さん、終わりましたよ」と探す修理人、風呂場で和姦というお決まりの流れ。これから妻は定期的にトイレを詰まらせ修理人と情事を重ねる。
中盤以降、映画は意外というかトンデモな展開になる。堅物サラリーマンの夫は、取引先の接待でSMクラブに入り浸りMの調教を受ける。女王様の聖水を飲み、靴を舐め潔癖症から解放されていく。ただここでのSMプレイにしても、映画が見せたいSEX、オナニーといった「官能」シーンも実は全然面白くも扇情的でもないのが残念。
匂い、臭いによって官能が刺激されるというのを見せて欲しかった。この妻にとっての「性行為」は鼻で行われる。もっと男の腋や股間を嗅ぎまわって欲しかった。結局、嗅ぐは舐めるに発展していくし、ラスト、トイレを修理する夫の頬に流れる汗を舐める妻で終わるのではあるが。
メガネ夫婦とトイレ修理人と実は修理人の婚約者のSM嬢の4人の主要キャラクター、見ていて恥ずかしくないのが立派。
こういう映画って役者未満の人が多くて、見ていて恥ずかしくなるのだが(この映画では脇役の、もう一人のSM嬢が強烈に恥ずかしい!)、普通に見ていられる。
一つ大きな疑問点。メガネかけて性行為はしないでしょ?
もとはR18らしいがCS放送でR15に編集されているらしい。